木村隆徳、海潮寺四十一世(現住)     


富山県に「光岡自動車」という小さな自動車メーカーがあります。そこから「我流」という車が発売されていまして、私はよっぽどその「我流」を買おうかと思ったのですが、なんとか我慢しています。
実は「我流」という言葉は私の性格をよく表していると思っています。私は小さい頃から工作が好きでした。小遣いがほとんどなかったので十分な材料を買うことが出来ず、自分流に作っていました。
中学・高校時代はラジオ・アンプ作りに精を出していました。お金が十分に無い上に、田舎で部品が揃わず、雑誌に書いてある通りに作ることが出来ず、いつもまがい物を作っていました。
しかし親の指示に従って宗門の大学である駒沢大学に入学した折に、そこそこのお金を持って、夢の秋葉原に行き、雑誌に書いてある通りの部品を購入し、夢のアンプを作りました。確かにそれなりの音が出ました。しかし、それ以来アンプ作りは止めにしました。
私はどうも、お金のない田舎育ちという制約によって、出来そうにない材料で自分流にやってみるところに喜びを感じてしまう変則人間になってしまったようです。
私が書きました法話「海潮音」は、こんな変則人間の書いたものであることをご了承の上、お読み下さるようお願い申し上げます。合掌


昭和22年、山口県萩市に生れる。駒沢大学仏教学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程(印度哲学)卒業。同博士課程中退。東京大学助手。大本山総持寺安居。同62年より海潮寺住職。山口大学教育学部(平成1年〜同13年)、島根県立石見高等看護学院(平成10年〜)、各非常勤講師。