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なるほど法話 海 潮 音
宗教 第 9 話 バラモン
紀元前1500年頃、中央アジアにいたアーリア人はインド西北部に侵入しました。彼らはきわめて宗教的な人々だったようです。
彼らによって、紀元前800年頃、バラモン教が成立し、同時にバラモン(僧侶)を最上とし、王族、庶民、隷民とつづく階級制度が成立しました。
僧侶であるバラモンが最上階級というのも不思議ですが、彼らは呪力を使ったのです。
王族(武士)たちが戦場に赴くとき、呪力を駆使するバラモンたちに戦勝祈願をしてもらいました。王族といえども人間の弱さがあったわけです。
それにつけこんだのがバラモンです。規則どおりに儀式を執行すれば戦勝間違いなしですが、バラモンたちが故意に儀式を間違えると、戦場に赴いた王族たちの首が飛ぶということになったのです。
バラモンたちに正確に儀式を執行してもらうためにはどうしたらよいかといえば、沢山のお礼をすればよいわけです。こうしてバラモンたちは最上階級に居座っていたのです。
そのころ、インドにも鉄器が伝わりました。これを使って王族たちは武器を作ると同時に斧を作り、インド東部の森林地帯に進出し、これを開墾して紀元前500年頃、稲作を可能とした結果、彼らは大いに栄えて、世は実力の世界となり、王族と庶民で世の中が回るようになったのです。
そうなってくると、王族の上で君臨するバラモンは邪魔になりました。
バラモンたちは自分たちを守るために階級は生まれによって決まるのであると言っていましたので、王族たちは、生まれによって決まるのではなく、自分の現世での行為(業、カルマ)によって、来世にそれにみあった階級に生まれるのであると主張したのです。
要するに立派な行いをした者が来世に最上階級、すなわちバラモン階級に生まれるというわけです。
ここに、「業報」(行為の来世への影響力)と「輪廻転生」(死後に生まれ変わる)という考えが成立しました。
ところが、バラモンたちはしたたかです。自分たちを危うくする業と輪廻の考えを逆手にとり、現世に下級階級に生まれているものは、過去世にそのように生まれるべき行為(業)をしたから下級階級に生まれたのだとしたのです。
このようにして業・輪廻思想は階級制度の破壊を目指して主張されたにもかかわらず、逆に階級制度を維持する思想と化し、バラモンは最上階級でありつづけたのです。
言葉というものは同じ言葉でも、強者が使うか、弱者が使うかで、まるで違った機能をするようです。肝に銘じておくべきかと思います。 (平成18年3月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。