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なるほど法話 海 潮 音
宗教 第 6 話 苦悩のない生活
科学は私たちに非常な恩恵を与えてくれました。便利な世界、贅沢な世界、長生きのできる世界、などなどを与えてくれました。科学は私たちの欲望を何でもかなえてくれる玉手箱のようにさえ思えます。
しかしながら、せっかく科学がかなえてくれたのに、かなえてくれるたびに、当たり前になってしまって、欲望の方は更にもっと便利に、贅沢に、長生きにと、留まるところを知りません。従っていつも不満状態から抜け出せません。それどころか、ものごとには限界というものがありますので、各分野で弊害が吹き出しつつあるのが現状です。
科学万能主義にブレーキをかけるのは宗教であると前回述べましたが、宗教は救済を説きます。近頃の「何々教」が、こうすれば病気が治るとか、お金が儲かるとか、頭が良くなるとか、というのは救済ではありません。どす黒い欲望をそのまま認める点は科学と同じですが、「こうすれば」という根拠は頭を傾げざるを得ないのですから、宗教でないのは勿論、「えせ科学」とでもいうべきものかと思います。
仏教やキリスト教など真の宗教の説く救済は、「苦しみが無い」ということであります。それは、神とか仏とか教えというものを徹底的に信じる(あるいは、行じる)ことによって、神・仏・教えの方を立てて、自分を立てない(ここがみそ)ために、自分に与えられた現実を無条件に受け入れることができ、そのために、どんな現実に対しても「それを苦とする心を持たない」という状態となり、これが真の宗教の「救済」でありましょう。
科学が欲望をそのままにして現実を好ましい状態に変えようとするのに対し、宗教は現実をそのままにして心を変革することにより、苦悩を無くすること(救済)を目指していると言えましょう。
環境問題や人口問題を抱える小さくなった地球号で、これからの二千年代を生きていかなければならない私たちにとって、目指すべきは、更なる贅沢な生活ではなく、苦悩のない生活ではないでしょうか。(平成12年3月)
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