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なるほど法話 海 潮 音
宗教 第 4 話 観音様のお顔
日本人が一番信仰している仏様といえば観音菩薩でしょう。その観音菩薩はどのような仏様なのでしょうか。
まず「菩薩」とは、仏になろうとして修行している人間をいうのですが、観音菩薩の場合は既に仏の資格を持ちながら衆生への慈悲のあまり、安閑と仏の座に坐っておれず、一段下って菩薩の位で現世におりてきて衆生救済に励んでおられる仏様だといわれます。
つぎに「観音」とは、「音を観る」と書きますが、音は聞くもので見るものではないのですが、観音経に、苦悩する衆生が一心に(観音菩薩の)名を称えるならば、観音菩薩は即時にその音声を観じて皆解脱せしむ、とありますから、観音菩薩は衆生の苦難の叫び声を聞くや、その本質を観て、すぐさま対策の手を打つ、というわけで「観音」なのですね。実行力ある慈悲心の持ち主であられるわけです。
ところで、仏像のお顔というものは、微笑みの顔のようにも、怒った顔のようにも見えます。拝む者の心によって、どちらにもなるように思われます。
事実、観音菩薩の中に十一面観音という十一のお顔をもった仏様がおられて、正面の三つのお顔が慈悲相、左の三つが忿怒相、右の三つは白牙を出す相、背後の一面が暴悪相、そしてその上に如来面があり、優しい顔から怒った顔まで色々あるわけです。
観音様の本質は慈悲ですが、かといって、いつもにこにこ人間の願いを聞いてばかりいるのではありません。悪いことをすれば怒りの相を示し、よいことをすればほめて下さいます。観音様を信仰される人は、きっと、その時どきで違って見える観音様のお顔を拝んでおられるにちがいないと思います。
このような何か大きなものに対する畏敬の念をもつことは、現代人にはとても大切なことだと思います。今、子供たちが狂い始めているのも、大人たちが、このような畏敬の念を育てる場を彼らに与えていないからではないかと思うのですが。 (平成11年6月)
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