なるほど法話 海 潮 音      


宗教 第 19 話  お孫さんに
    

   
 日本人の多くは仏教徒だと言われています。御盆の季節には列島大移動が繰り返されますから、おそらく間違いないでしょう。

しかし近年は少し様子が違ってきたように感じます。地方にいますと、さほどでもないのですが、都市部では葬儀が驚くほど簡略化されてきているようです。

その簡略化も一切儀式をしないという簡略化も含まれますから驚きです。

葬儀をしなければ法事もしないのでしょうから、先祖供養を放棄したということになるでしょう。これは単に先祖供養をしないというだけではありません。

日本人が仏教徒であるという中身は、仏式の先祖供養をしているということですから、宗教そのものを放棄したということにもなるでしょう。これは恐ろしいことであります。

世界に宗教を持たない民族はいないでしょうから、人類史上に例のないことを日本人は始めようとしているとも言えましょう。

かなり以前に、たしか無着成恭さんだと思うのですが「あなたの宗教は何ですか。という質問は、あなたはどの宗教で自分をコントロールしているのですか、という質問と同じです」と何かに書かれていたのを思い出します。

宗教を持たないと言うことは、自分をコントロールしないということと同じで、勝手放題のことをするということです。

最近の報道には胸が痛くなる報道が多いのですが、無宗教化傾向と関連がないのか心配です。

日本人の宗教は先祖供養が主体になっています。私はそれで十分機能すると思っています。しかしそれを無くしてはなりません。

宗教を身につけるのは幼児期です。その幼児期に宗教心を身につけるのを邪魔している最大の要因は核家族化ということだと思います。

かってはおじいちゃん・おばあちゃんとお孫さんがいっしょに暮らしていました。今は別々です。だから仏壇のある家にお孫さんはいません。お孫さんのいる家には仏壇がありません。

ですから幼児期に手を合わせて御先祖様を拝むということが身に付きません。しかし宗教心の芽生えはこんなところにあるのだと思います。

この度、私も所属する山口県曹洞宗布教研究会で子供たち用の仏教パンフレットを作りました。一部同封いたしますので、お孫さんと一緒に御覧下さい。お孫さんが遠くの場合は送って下さるとうれしいです。

お寺ではアパートの部屋でもお祀りできるミニ仏壇一式(五万円くらい)も用意しております。お孫さんに手を合わせる場を作ってあげて下さい。今、このようなことを勧めることこそ、私たちの仕事だと思っています。ご連絡をお待ちしております。(kaichoji@haginet.ne.jp )
 (平成二十七年十二月)