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なるほど法話 海 潮 音      


宗教 第 17 話  仏壇の力
    

   
 日本のご家庭には大抵のご家庭に仏壇があるとお考えかと思います。

当山のお檀家さんにもすべて仏壇がございます。しかし、そのお檀家さんの後継者に当たられるお若い方のご家庭には、逆にその大半のご家庭に仏壇が無いというアンケート結果が出ています。

親の家に仏壇はあるのだから必要ないではないかとお考えかも知れません。しかし、そうではないのです。

なぜなら、そのお若い方のご家庭で赤ちゃんはお生まれになり成長されます。その時、そのご家庭に仏壇が無いとしたら、その赤ちゃんは仏壇に、そして御先祖様に手を合わせる日常的習慣なくして大人になられます。

中には、孫がお盆などに帰省した折にはちゃんと仏壇に手を合わせていますよ、と仰る方もおられます。しかし、毎日の習慣がとても大事だと思うのです。

幼児期にお母さんといっしょに仏壇に向かって手を合わせるという習慣があってこそ、本物の「御先祖様」、礼拝の対象としての「御先祖様」という意識を獲得することができるのではないでしょうか。

 日本の仏教は本来の仏教であるインドの仏教とはだいぶ様子が異なります。

道元禅師や親鸞聖人の説かれた仏教は本来の仏教的要素を色濃く保持していますが、江戸時代を通過した仏教は総じて先祖供養をその基盤としています。庶民的仏教はむしろ先祖供養で成り立っていますし、それによって日本人はまともな日本人としての生活をしてきました。

人が亡くなれば四十九日までは包みものに「御霊前」と書くように霊的に扱われますが、四十九日を過ぎますと「御仏前」と書きます。これは四十九日を過ぎると「仏」として扱われている証拠です。

亡くなった親を日本人は「仏」として礼拝します。これが日本人の庶民的宗教なのです。

ところが、先に述べましたように核家族のご家庭には仏壇がないという現象により、この日本人の宗教的在り方が急速に失われつつあります。

キリスト教やイスラム教といった一神教では絶対神を崇拝します。言い過ぎかも知れませんが、この絶対神に相当するものが庶民的日本人にとっては「仏」(御先祖様)です。

この「仏」(御先祖様)に対する思いが日本人から無くなろうとしているのです。このことは日本人が本当に無宗教になってしまうことを意味するでしょう。

テレビ等で毎日のように報道される凶悪事件は日本人が宗教を失いつつあることを示しているのではないでしょうか。

簡単なものでいいのです。生まれくる赤ちゃんのために仏壇を備えて下さい。ご連絡下さればご相談に乗ります。(平成二十六年九月)
     

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。