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なるほど法話 海 潮 音
宗教 第 15 話 当山のお葬式
日本の仏教寺院の大半は江戸時代に開創されました。寛永八年(一六三一)に江戸幕府により新寺建立禁止令が出されたにもかかわらずです。
なぜかといいますと、十年後の寛永十八年(一六四一)頃から、幕府がキリシタン根絶のために日本人全員に寺請証文の提出を義務付けたからです。
寺請証文とは、寺院がその檀家の人をキリシタンではなく確かに自分の寺の檀家であることを保証した証明書のことです。民衆(檀家)側からすれば身分証明書を意味することになります。
日常的に大切なこの証明書を発行してくれる寺院が自分の住む村にないのであればとても不便ですから、この頃から日本の津々浦々に寺院が建立されることとなりました。
この寺院は同時に自分たちのお葬式も執り行ってくれる場所でもありました。これらの寺院が現在まで続いているわけです。
現在では種々の証明書の発行は役所がしますが、お葬式の方は勿論、寺院の本堂で行うのが原則です。
ところが近年、様子が変わってきました。お葬式を葬儀社の会館で行う傾向が強まったのです。主な理由は恐らく駐車場の問題でしょう。江戸時代から続く寺院に駐車場のスペースなどあるはずがありません。
しかし人が亡くなり、死者と生者が人生最後のお別れをする厳粛な儀式に宗教的雰囲気の充ち満ちたお寺の本堂を使わない手はありません。
幸い当山では土地がありましたので駐車場を完備できました。また、現在の世情を考慮して本堂に百五十人分の椅子と大型エヤコンまで揃え、お檀家さんのお葬式はお寺の本堂で行うことを原則としています。
その際、葬儀社の会館と比較して不満が出ないよう生花による祭壇花の飾り付けもお寺の費用で行っています。更には曹洞宗青年会の模擬葬儀をヒントに三十二個の灯明サービスも行っています。
葬儀式の中身についても、最も大事なのはお戒名だと思っていますので、ご遺族がそのお戒名によって故人をありありと偲べるようなお戒名をと心がけています。
そのためには、住職が考えた故人のお人柄をお戒名にするというのではなく、喪主を中心にご遺族に故人のお人柄を思い浮かべていただき、それを選択記入できるような「故人の生前のご様子」と題した用紙を準備し、それに記入してもらって、それを基にお戒名を用意しています。
故人に対するご遺族の思いをお戒名とすることができるよう心がけているわけです。お通夜の最後にお戒名について説明し、それを刷ったものを喪主に差し上げてもいます。
人生最後の儀式であるお葬式を大切にしたいものと思っています。
(平成二十六年三月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。