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なるほど法話 海 潮 音
宗教 第 13 話 イスラムの礼拝
一月二十五日、エジプトで反政府デモが始まってから十八日目の二月十一日夜(日本時間十二日未明)、スレイマン副大統領は国営テレビで声明を発表し、ムバラク大統領(82)が大統領職を辞任し、全権限を軍に移譲したことを明らかにしました。中東での民主化を求める波が、「盟主」エジプトにも政権崩壊を引き起こしたということです。
たまたま次女がカイロ大学に留学しており、一月二十八日、イスラムの祝日である金曜日の礼拝が終わった後に百万人デモがあるという話を娘から聞いておりましたが、何時でしたでしょうか、日本の真夜中(カイロ時間は七時間遅れ)に緊張した声で電話をしてきました。
「今、アパートの前で銃撃戦があり、人が撃たれた。外には出れないし、インターネットは遮断されているし、一時帰国の航空券を日本からネットで予約してほしい」という内容でした。
アパートには後輩の二人も居ましたので、三人分の予約をパリ経由のフランス航空で取りました。本来は航空会社からのメールを窓口で提出するのですが、今回はそれも不可能で、電話で伝えた予約番号を口頭で伝えるだけでOKだったようです。
更にフランス航空では予約した便よりも前の便に空席があったために、そちらに回してくれ、できるだけ早くカイロ脱出ができるよう配慮してくれたようです。お陰で無事二月三日に成田に着いたと電話してきました。
娘から聞いたエジプトの様子を少しばかり申し上げます。
無数のデモ隊が警官と対峙しているとき、イスラムの人たちが行っている一日五回の礼拝の時間がやってきました。
現在はスピーカーで礼拝の時刻を知らせるそうですが、その知らせがあった時、誰かが「もう終わりだ、終わりだ」と大声で言ったのを合図に、デモの群衆は礼拝を始めたそうです。ところが、もう一方の警官たちも驚いたことに礼拝を始めたのだそうです。
その礼拝は神に感謝する礼拝なのだそうです。神に何を感謝するのでしょうか。
エジプトの若者は何らかのムバラク大統領との縁故がないと就職できないそうです。いくら大学で優秀であってもだめなのだそうです。
そんな職にありつけない若者が中心のデモ隊が礼拝の時間が来ると、警官隊を前に礼拝をするというのです。そしてムバラク大統領との何らかの縁故のある警官隊も礼拝をするというのです。
これが宗教というものなのでしょうか。私は宗教とは「自分という思い」をはずすことだと考えていますが、イスラムの礼拝は正にそういうことなのでしょうか。考えてみる必要がありそうです。(平成二十三年三月)
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