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なるほど法話 海 潮 音      


宗教 第 11 話  先祖供養とは何か    

 このような電話をもらうことがよくあります。

「主人が具合が悪く、医者に行っても直らないので霊感者に見てもらったら、あなたの先祖で供養を受けていない方が大変苦しんでいるので供養をしてもらってくださいといわれました。その方の供養をお願いできますでしょうか」といったものです。

恐らくその霊感者氏はいきなりそのように言うのではなく、色々と聞き出した後で、傍系先祖のどこかに、そう言えばその方への供養はしていないなと納得できるようなスキを見つけ、自信満々にそのように言うのでしょう。

そのようなスキをつかれれば、もともとわらをもつかむ思いで霊感者氏を尋ねているのですから、ひとたまりもなく信じてしまうのでしょう。

そのように言った霊感者氏が供養についても責任を持つのであれば問題はないと思うのですが、供養についてはお寺にお願いに行くようにと言っているらしいのです。

小生が住職をしているお寺には地蔵堂があり、そこに安置されている身代わり地蔵尊は江戸時代から庶民の信仰を集めている地蔵尊です。

先ほどのような電話がかかると、「霊感者という人にそのように言われれば気になって仕方ないでしょう。でもそのようなことはないのですよ。でも私がそう言ったからといって、ああそうですかという具合にはいかないでしょうから、あなたの気になって仕方ないところをお地蔵様にお願いして取り除いてもらいましょう。ご主人様のこともお地蔵様にお願いして守ってもらいましょう」といって身代わり地蔵尊の前に来ていただき、合掌するその方の後ろからお経をあげることにしています。

 ご先祖様を供養するのは、ご先祖様が苦しんでいるからではないでしょう。

ご先祖様があって今の自分があるのですから、感謝の気持を込めて供養するのだと思います。

一家の主婦がご仏壇をいつもきれいに掃除をし、朝、仏飯とお水を奉げ、お花も添え、お灯明も火をともし、線香をまっすぐに立て合掌し、それに習ってご主人が会社に行く前に仏壇に合掌し、子供たちも同じように合掌してから学校に行くという習慣がつけば、家庭の中に自ずと中心となる核ができるのではないでしょうか。

ご先祖様へのご供養は「ご先祖様に」という心でするのではありますが、実はそのような日々の行いが家族の心の安らぎをもたらし、今生活をしている家族を守ることになるのではないでしょうか。

先祖供養とはご先祖様のためにするのではありますが、今生活している家族全員のために行っているとも言えるでしょう。 (平成二十年四月)

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