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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 9 話  釈尊の「いじめ対策」    

元先生との会話の中で「いじめ」のことが話題にのぼりました。その元先生は「新聞・テレビでは〈いじめ〉はなかなか把握しにくいと報道されていますが、先生がその気になれば、子供の方から言って来ます。先生のそんな態度が子供たちに判ると、自分のクラスの子供だけでなく、他のクラスの子供も言って来ます」と話しておられました。いじめの把握が難しくなっているのも、先生が子供より学校を気にしずぎておられるからかも知れません。

仏教の開祖、釈尊(ブッダ)の教団にも「いじめ」が存在したようです。弟子の一人にマハ−・カッサパという比丘がいました。彼は欲をはらうために清貧さに徹する頭陀行(ずだぎょう)を行じ、そのために大変みすぼらしいなりをしていました。このため、彼の真価を知らない比丘たちから軽蔑されることがしばしばでした。

このことを知った釈尊は、マハ−・カッサパを自分の傍らに呼んで、いろいろな質問を投げかけ、それに対してマハ−・カッサパはすらすらと答えました。そこで釈尊は多くの弟子たちの前で「このマハ−・カッサパはみすぼらしい姿をしているようでも、悟りの力は私とほとんど変わらない」と述べられました。

このマハ−・カッサパ(初祖摩訶迦葉尊者)は、頭陀第一といわれる十大弟子のひとりで、釈尊亡き後、五百人の阿羅漢(聖者)を集めて仏典編集会議を開き、その議長を務めた方と言われています。

この逸話の大切な点について、初期仏教の権威である水野弘元先生は「周囲から蔑まれ、差別されている弟子を身近に呼んで、その弟子の持つ素晴らしさを証明されたことにある」と述べておられますが、そう言えば、いじめ事件で報道された子供たちには、表向き気の弱そうな所があると同時に、裏には何か秀でた面を持っているケ−スが多いようにも見受けられます。釈尊の「いじめ対策」は大いに参考になるように思うのですが、いかがでしょうか。(平成8年2月)


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