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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 7 話  薬害エイズの根底にあるもの    

ご承知のように、「薬害エイズ」とは血友病患者に使われる治療薬によって大量のエイズ患者を出した医療ミス事件である。血友病の治療薬には、安全な加熱製剤と危険な非加熱製剤とがあるが、事件当時の日本の製薬メ−カ−の大半は、危険な非加熱製剤しか造る事が出来ず、その危険な薬が患者に投与され続けた。

そのような中で、米国・国立防疫センタ−は、ある血友病患者を日本のエイズ第1号と判定したが、厚生省エイズ研究班(安部英班長)は、その患者をエイズ第1号と認定することを見送った。

なぜ認定を見送ったかというと、認定すれば安全な加熱製剤を緊急輸入せざるを得ず、そうすれば国内の製薬メ−カ−は大打撃となり、また対策の遅れは厚生行政の大汚点になるからである。

そして、製薬メ−カ−は危険な非加熱製剤を売りまくり、医師は使いまくった。製薬メ−カ−の多くに厚生省幹部が天下り、安部氏は製薬メ−カ−から巨額の寄付金をもらい財団を設立した。その陰で二千人の被害者が出たのである。

明治維新の「神仏分離」と「廃仏棄釈」という政策が日本人から宗教心を奪い、偏狭な人間にしてしまったと説く無着成恭氏は、氏の『昭和教育論』の中で、忠臣蔵の四十九人は「殿様のために」死んだが、それが明治維新になると「天皇のために死ぬことこそ、ほんとうの生き甲斐だ」という教育に変えられた。その国家主義教育は昭和二十年までつづいた。それ以後、学校教育は「何に生命をかけるかは自分自身が自由にきめることで、だれかにきめてもらうことではない」と教えたのだろうか。すくなくとも、池田内閣の「所得倍増論」以後は、「金儲けにいのちをかけよ」と教えてきたのではないか。その結果、人をだますことなど、罪の意識も持たないばかりか、人を殺してまでも金をとろうとする人間があふれてきたのではないか、と説いている。傾聴すべき意見ではなかろうか。(平成8年5月)


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