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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 6 話  なぜ若者は新興宗教に惹かれるか    

連日オウム真理教のニュ−スが報道されるなか、東北学院大学の浅見定雄教授の「新興宗教と文化人の責任」(文藝春秋、五月号)という一文に、なぜ若者が新興宗教に惹かれるかという理由が分析されていますので、ご紹介いたします。

教授は、まず現代社会の問題から三点を挙げておられます。第一は、科学の神秘化ということ。現代の宇宙論や素粒子論は一般人にとっては、ある程度から先は、まさに「神秘」ですが、このことが若者に霊魂などを信じる傾向を強めているようだという指摘です。

第二は、社会の複雑化が進んで、若者たちの出る幕がないという意識です。このような意識は、理想的社会を願う若者を主観的理想郷を説く新宗教に向かわせるというのです。

第三は、地球的「終末」意識。即ち、資源の枯渇、環境問題、社会全体の腐敗堕落、これに20世紀末という意識が重なって終末的危機感を生み出すと、この危機感をあおりつつ、他方で独自の救済の道(?)を示す新宗教に、若者はわりと簡単に惹かれてしまうというのです。

更に教授は、現代の若者の側から四点を挙げておられます。第一、若い教祖に惹かれる。第二、若い教祖を先頭に、疑似家族、疑似兄弟の群れを作りたがる。第三、大人社会の約束ごとの及んでこない「理想郷」に魅力を感じる。これは大変な危険性を含む。即ち社会規範の及ばない所に仲間同士の価値観だけで生きていると常識的感覚が麻痺し反社会的なことでもわけなく出来るようになってしまう点です。第四、恵まれた環境で過保護に育った若者の「こらえ性のなさ」、手っ取り早く理想社会を作りたくて新宗教に入るという短絡思想です。

以上の教授の分析に蛇足を加えますと、受験に勝ち抜いた優秀な若者とは、親の命令に従順な箱入り人間なのではないかということです。彼らは誰かに命令されないと何も出来なくて、それで新宗教に入ってしまうようにも見えるのですが。(平成7年5月)


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