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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第55話  指導者の資格   

   
 今月20日にいよいよトランプ新政権が発足しますが、それに先立ち11日にトランプ次期米大統領が大統領選後始めて記者会見を開きました。その記者会見は終始「トランプ・ショー」で終わったようです。

トランプ氏について、毎日新聞記者の取材に答えた英シンクタンク代表のパニラ・ラドリンさんは、彼は「アメリカ・ファーストを掲げる排外的な政治理念」を持ち、「自らの利益だけを求めて行動するエゴイストでもある」と酷評し、「今や、政治的に最も安定している日本が国際社会でリーダーシップを発揮する必要がある」と付け加えています(毎日新聞1月13日朝刊)。

先般、あるTV番組で歴史学者の磯田道史さんが「大河ドラマ」に取り上げたい人物として上杉鷹山(治憲)のことを話していました。

この人物については、戦前は教科書にも出ていたようですが、なぜか戦後はそのようなこともなく、今はほとんど知られていない人物のようです。

ところが、一九六一年、第35代米大統領に就任したジョン・F・ケネディは、日本人記者団から「あなたが、日本人で最も尊敬する政治家はだれですか」という質問に「上杉鷹山です」と答えたそうです。

インターネットで上杉鷹山のことを調べてみましたら、伊勢雅臣さんの「国際派日本人養成講座」というサイトが参考になりました。

それによると、上杉鷹山は日向(宮崎県)高鍋藩主の二男として誕生し、十歳で破産寸前の米沢藩の藩主上杉重定の養子となり、十七歳で第九代米沢藩主となって米沢藩の財政再建を見事に成し遂げたとされる人物でした。

鷹山は財政再建の道筋をつけた三十五歳のとき、重定の子である治広に家督を譲っていますが、そのとき「伝国の詞」と呼ばれる次のような三ヶ条を贈っています。

「一、国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして我私すべきものにはこれなく候。
一、人民は国家に属したる人民にして我私すべきものにはこれなく候。
一、国家人民の為に立たる君にて、君の為に立たる国家人民にはこれなく候。」というものです。

鷹山は藩主として自らを「民の父母」と位置づけ、家族としての藩の行動方針を「三助」として打ち出しています。

即ち「自助」(自ら助ける)・「互助」(近隣社会が互いに助け合う)・「扶助」(藩政府が手を貸す)という三助です。

この三助の精神は災害時の日本人の行動を見ると今も確かに存在しているように思われます。

磯田道史さんは先のTV番組で「偉大な人物とは、その人がどれだけ獲得したかではなく、どれだけ与えることができたかで決まる」と言っておられました。(平成二十九年二月)
 

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。