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なるほど法話 海 潮 音
社会 第52話 池上彰さんの本
『池上彰の現代史授業 21世紀を生きる若い人たちへ 昭和編①昭和二十年代 戦争と復興』(ミネルヴァ書房、二〇一四年)を読みました。 この本は「こどもくらぶ」の企画編集で、総頁数は48頁、総ルビです。タイトルからも分かるのですが、総ルビですから、小学生も読者対象になっているのでしょう。かといって低レベルで書いてあるわけではありません。 表紙カバーに「現代史を、精選に精選を重ねて記述」とあります。総頁数48頁の所以でしょう。現代史の要点が要領よく書いてある本というわけです。横着な私にはピッタリな本だと思い、読んでみました。 内容については、たとえばこういう事が書いてあります。「もっと知りたい!」というコーナーの中に「終戦の日はいつ?」という質問の見出しがあり「・・・日本では、8月15日を終戦記念日としていますが、国際法上は、日本が対連合国降伏文書に調印した9月2日が終戦の日です」とあります。実は私も初耳でした。 8月15日に昭和天皇がラジオ放送(玉音放送)で全国民に終戦を伝えたことにより、その日が終戦記念日となったのですから、日本人なら終戦の日は8月15日で、9月2日と思うはずがありません。 しかし、これは単なる形式上の問題ではないようです。と申しますのは、今ロシアとの間で北方領土問題というものが存在しますが、戦前は日本の領土だったものが、終戦前後にソ連軍に占領されて生じた問題です。 しかもソ連が日本に宣戦したのは、私たち日本人が終戦日と考えている8月15日の一週間前に過ぎない8月8日なのです。 そこから始まったソ連軍の日本攻撃は終戦直前の弱り切った日本軍を蹴散らすように進められ、こともあろうに、日本が降伏文書に調印した、国際法上正式な終戦日である9月2日をも無視して攻撃は続けられ、結局、満洲・朝鮮半島北部・南樺太・北千島・択捉・国後・色丹・歯舞の全域を完全に支配下に置いた、9月5日になって初めてソ連軍は一方的な戦闘を終了したとされています(ソ連軍の日本攻撃についての詳細は「ソ連対日参戦」〈ウィキペディア〉を参照)。 これは8月8日から、日本人が思っている終戦と国際法上の終戦を挟んだ、9月5日までのわずか一か月足らずの話です。 まあ、これが戦争というものかも知れませんが、今回の池上彰さんの本には「あの戦争によって、いまの日本やアジアの関係が作られました。日本に暮らす私たちは「知らない」では済まされないのです」とあります。 本書のような手短に知ることのできる本で現代史をおさらいしてみてはどうでしょう。(平成二十七年七月) |
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