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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第46話  「千年希望の丘」第一号丘完成   


 東日本大震災から2年と3ヵ月が経ちました。復興が進んでいないというニュースは耳にしますが、進んでいるというニュースはほとんど耳にしません。

そんな中、宮城県岩沼市が進める「千年希望の丘」第1号(15基予定)が同市下野郷に完成し、6月9日、現地に全国から4500人(目標3000人)が集まり、その土地で採取したドングリから育てられたタブノキやカシなど三万本の苗木を植える植樹祭が行われました。

この丘は、震災瓦礫や津波堆積土を埋め立てて造成したもので、津波発生時には避難場所になり、津波の減衰効果も見込まれ、平時は震災の記憶をつなぐメモリアル公園になるとのことです。

この植樹祭を指導されている宮脇昭横浜国立大学名誉教授(森林生態学)によれば、松ではなくタブノキなど常緑広葉樹(いわゆる雑木)は根が地中深く数メートルも伸び、更に根が瓦礫を抱え込むため、松のように津波で簡単に倒れることはなく、森の防潮堤には最適な樹なのだそうです。

また、同名誉教授によれば、その土地の本来の形で種々の常緑広葉樹を組み合わせて植えることにより、人間の手を離れても世代を超えてその本来の形を保ち続け、次の氷河期が到来する9000年間も生き続けるとのことです。

同名誉教授は震災被災地300キロメートルに森の防潮堤を造ることを提唱しておられ、今回造成された全長300メートルの第一号丘はその千分の一にしかなりませんが、大いなる第一歩というべきではないでしょうか。

井口経明岩沼市長は植樹祭の挨拶で「希望の丘が世界の震災復興のモデルになれば」と述べられたとのことです。

 今回の震災復興のために何ができるのかと、昨年、東北に行って以来考えてきました。道元禅師の「ただかれが報謝をむさぼらず、みづからがちからをわかつなり」(『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法)というお言葉は、正にボランティア精神を謳ったものですが、私が考えたのは、萩に居たままでそれができないかということです。

考えた末に、植樹祭で保水と雑草よけに使う稲ワラを、風で飛ばないようにロープをかけますが、その時使う竹串を現地に送るという仕事です。

寺の山で竹を取り、70センチの竹串にして約3000本を送りました。今回の植樹祭で使っていただいたようで、自分なりのことができたような気もしています。

しかし300キロの目標からすれば今回はわずか千分の一に過ぎません。竹串を受け取って下さった仙台市輪王寺・日置道隆住職の「これからが勝負です」は胸に刺さっています。 (平成25年7月)
 

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。