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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第45話  ドングリ拾い   


 11月26日から29日の4日間、東北にドングリ拾いに行ってきました。

近くの山へ拾いに行くのなら解るが、東北へ拾いに行くとは何事ですか、といわれそうです。

私が行ったのは、このところ本誌によく登場する「いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会」の日置道隆会長(仙台市輪王寺住職)のところです。

東日本大震災被災地に構想されている森の防潮堤(長さ300km)に植える木を育てるために、まずその種(ドングリ)拾いに行ったのです。

9月に輪王寺で日置さんにお会いした折りに、萩には椿の原生林があるので、その種を使ってもらえないか提案したところ、宮脇昭先生の潜在自然植生(その土地本来の樹木の育生のあり方)に従う限り、東北に植える木は東北に生えている母樹から採った種で育てた苗木でなければだめなのです、ということでしたので、飛行機に乗ってドングリ拾いに行ってきたわけです。

こんな風に申し上げても、心の底から納得してもらえないことも十分解っているつもりです。

ともあれ、私は27日と28日の両日、ドングリ採取ツアーに参加したのですが、27日は現地の協議会スタッフ3名と、一般参加者は私1人でした。

色々説明を受けて車で出発しました。ドングリといっても、スダジイ、アカガシ、アラカシ、シラカシなど色々です。

これらの木は東北以西の日本に本来生育していた樹木であるにもかかわらず、恐らく金にならない木とされたのでしょう、「雑木」と呼ばれて伐採され、鎮守の森などに残っているのが主なもののようです。

スタッフの方々に従って拾っているうちに、「ドングリ拾い」といった呑気なものではなく、一粒も残さず拾い尽くす「ドングリさらい」といった感じの真剣な雰囲気そのものでした。

9月に「千年希望の丘」を見学した時、植樹の際にマルチングに使われたワラが風で飛ばないように縄がけしてあり、竹の杭が使われていました。

以前、自坊(海潮寺)の山の夏蜜柑畑に竹が侵入しているのを見ましたので、森の防潮堤構想に竹杭の提供ができるのではと思い、スタッフの方にその話をしておいて、萩に帰って早速に山に行ってみますと、何年も訪れることのなかった山の蜜柑畑は全くの竹藪と化していました。恐ろしいほどでした。

竹杭として役立てるということが無ければ、恐らく自然の猛威に負けて、「仕方ない、そこまで手が回らない」と適当な理由をつけて放置したことでしょう。

東北に行った経験が俄然やる気を起こさせました。「無為の功徳」と言っても許されるでしょうか。(平成25年1月)
 

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