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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第42話  東北研修旅行   

 9月25日から3泊4日の予定で宗務所寺族会研修旅行に加えて頂き、南三陸・気仙沼・陸前高田・大船渡・釜石・大槌といった被災地を見て回りました。

 初日はお寺の拝観でしたので、わがままを言って単独行動させて頂き、仙台空港からすぐの岩沼市空港南公園に行きまして、昨年5月26日に行われた「いのちを守る森の防潮堤植樹祭」の「千年希望の丘」を見てきました。

 説明では、植物生態学者宮脇昭氏の指導のもとに、ガレキを利用して造成した広さ2000uのマウンドに20種6000本の木を全国各地から集まった総勢千名を超える人々が「震災横難死者を弔うために、そして夢のある未来を想いつつ額に汗して植樹した」とのことです。

 この「千年希望の丘」を見学した後、右植樹祭の中心的役割を担われたお一人である「いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会」の会長であり、輪王寺住職でもある日置道隆師を御自坊にお尋ねし、御自坊の境内に植樹された60種33000本の森をご案内頂いたり、宮脇昭氏が提唱されている森の防潮堤構想の推進が如何に大変であるかという苦労話をお聞きでき、震災後の復興に向けて力強く踏み出されているお姿に接することが出来ました。

 また、大槌町の江岸寺では、震災後1年半が過ぎた現在でも生々しい震災の爪痕がひしひしと伝わってきました。

 御住職の弟様から津波が襲いかかり首まで海水に浸かりながら遂に頭が天上に届いてしまい、観念せざるを得なかったというお話も伺いました。

 一方で震災から1年半の気仙沼港では、港から見わたす限り震災の爪痕は全く感じられませんでした。

 その限りでは復興している感じなのです。壁に貼ってあった震災時の写真でやっとその時の被災状況が分かるくらいでした。

 ところがバスに乗って港から一歩でると、何もない草原が広々と見わたせます。

 所々に二三階建ての壊れた鉄骨建築物や作業中の大型ブルドーザーなどが目に入ります。

 しかし震災直後の様子を写した写真集などから受けるのけぞるような悲惨さは全く感じられません。ほとんど復興した様子がないにもかかわらずです。

 なぜなのだろうとしばし考え込みました。そして気が付いたのは、一面に草が生えているということです。

 緑の草が生えていると悲惨さを感じないのではないか。そんな感じを受けました。

 本来そこは家が建ち並び、商店街だった所だということですが、そのような説明を受けても、悲惨さが感じられないのです。

 その時の緑の不思議な力を感じつつ、改めて森の防潮堤を応援しようと思ったことでした。(平成24年10月)
 

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。