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なるほど法話 海 潮 音
社会 第41話 ある復興構想
植物生態学者・宮脇昭さんの『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る──植樹による復興・防災の緊急提言』(学研新書、2011年10月)を読みました。 宮脇さんは3・11大震災を滞在していたインドネシアで知り、約3週間後には被災地に入って現地調査をし、6月から本書の執筆に着手し、わずか3ヵ月後に出版されています。 宮脇さんはこれまで国内外の1700ヵ所以上で植樹指導し、植えた木は4000万本以上とか。 そのような宮脇さんの豊富な経験が「森の防波堤」という復興構想の緊急提言となったようです。 宮脇さんの構想とは、東日本大震災の被災地の海岸線南北300キロメートルに幅30〜100メートルのかまぼこ状のマウンド(土塁)を築き、そこにその土地本来の樹木を選んで苗を植えておけば、10〜20年で防災・環境保全林が海岸沿いに生まれるというものです。 その際、「その土地本来の樹木」とは、先史時代から何回も襲ったであろう自然の大災害に耐えて生き残った樹木という意味で、東北地方では鎮守の森に見られるタブノキやカシ、シイ類(常緑広葉樹)をいうようです。 これらの樹木は土中に呼吸のための十分な酸素さえあれば、根を土中真下に4〜6メートルものばすため、巨大な津波のエネルギーにも十分耐えることができるということです。 一方、マツの場合は根が浅く、襲いかかる津波にほとんどがなぎ倒され、それが流木化して被害をより大きくしたようです。 ところで、根が呼吸するための酸素補給はどのようにするのかといえば、マウンド(土塁)用の土に被災地のコンクリート瓦礫を人の頭くらいに砕いて混ぜ、隙間を作りさえすればよいのだそうです。その上、根が瓦礫に絡まり抜けない木となるそうです。 瓦礫には木質系(流木など)も含まれますが、これが植樹した木の肥料になるといいます。 すなわち被災地の瓦礫が南北300キロのマウンド作りの資材となるわけです。 宮城県岩沼市(震災で市面積のほぼ半分が津波で冠水した)では昨年九月にまとめられた復興計画に「森の防波堤」構想に学んだ「千年希望の丘」構想が盛り込まれたといいます。 他の被災地の自治体でも宮脇さんの構想が続々と取り入れられているようです。 宮脇さんは書いています。「南北300キロメートルのいのちの森をつくり、今後も必ず襲う大災害に耐えて発展できる復興のシンボルとして、みんなで協力して足もとから木を植えよう。・・・このいのちの森づくりを、東日本大震災の被災地から世界に発信していこうではないか!」と。 (平成24年9月) |
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