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なるほど法話 海 潮 音
社会 第39話 震災復興資金
3月11日、未曾有の巨大地震及び大津波が東日本を襲いました。亡くなられた方々には心からご冥福をお祈りいたし、避難所で不便を強いられている方々には一日にも早い普通の生活を取り戻して頂きたく願っています。
テレビが映し出す被災地の光景は町全体が津波で押し流されるという尋常でない光景です。
ただ今は被災者の救援が重要ですが、いずれ被災地の復興を問題としなければなりません。
復興資金は数兆円なのか、数十兆円なのか見当もつきません。一体これらのお金が何処にあるというのでしょうか。
国家予算の半分以上を国債に頼っている政府にあるとは思えません。まして被災地の地方自治体にあろうはずがありません。この復興資金調達という難問を如何に解決するかが次の大問題です。
この大問題を解決するための策を提示したものとして、吉田裕著『印刷マネーは庶民を救う』(新生出版、二〇〇八年)を挙げたいと思います。
同書の表紙帯に「これはコペルニクス的発想の転換だ!」とあります。私たちは造幣局で刷った新券を古札と交換することなく市場に投入すればインフレを起こすと固く信じています。著者の吉田さんはそうではないと、第三章に「インフレにならない理由」を説いておられます。
経済学の知識のない私には難しいことは分かりません。私なりの理解を述べてみます。
そもそも貨幣とは何かということです。Aさんは穀物を、Bさんは野菜を、Cさんは果物を生産しているとします。それぞれが物々交換をすれば、三人とも三つの物が手に入ります。しかし、もっと沢山の人から沢山の物を手に入れようとすれば、物々交換では不都合です。そこで貨幣というものが登場し、物と物、あるいは価値と価値の交換を仲介する役割を担います。
現在の日本における貨幣経済が均等がとれていると仮定しますと、貨幣全体と均等がとれている価値とは、交換可能な流動価値と見るべきでしょう。
それに対して、この度の巨大地震という自然の力によって失われた「町全体」という価値は、交換不可能な蓄積価値と見るべきかと思います。
その巨大な失われた価値を復興するために必要な資金は、現在、均等を保っていると仮定できる貨幣では確実に不足すると考えられます。
そうであれば、復興に必要な資金は吉田さんが主張する「印刷マネー」(造幣局が印刷する正規の紙幣)を復興資金として投入するというのは正しい解決策ではないでしょうか。
これによって莫大な雇用創出ともなりましょう。頭を切り換えれば「禍転じて福と為す」ことも可能かと思います。(平成23年4月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。