このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。([開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。)


なるほど法話 海 潮 音      


社会 第32話  今回の総選挙(2)    

 民主党が大勝し、政権交代が現実のものとなりました。政権交代そのものが目的のはずはなく、これからどのような政治をするかが問題です。

民主党のマニフェスト(政権公約)には魅力的なことが沢山書かれています。マニフェストが選挙のためだけのものであるはずはありませんが、「選挙のため」にかなりの重心がかかっていたことは否定できないでしょう。

たとえば、目玉の一つである「高速道路無料化」については、「流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる」とあります。高速道路が無料となれば国民は喜びます。民主党に一票投じようかということにもなりましょう。

さらに「流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる」といえば、荷物の運賃値下げまで考えてくれているのであれば、もう民主党に決めたとなったかも知れません。

しかし『毎日新聞』(九月十七日朝刊)は運送業者側の声を、「高速道路を利用するのは『時間を買う』ため」であり、「無料化で高速道路に一般車両が増えれば、渋滞が日常的に発生し、利用する意味がなくなる。渋滞を避けて一般道路を使えば、輸送時間も燃料代もかかる。結局、物流コストは下がりません」と報じています。

何も民主党マニフェストの不備をあげつらおうというのではありません。マニフェストはやはり選挙用でありましょう。実際の政治の中でマニフェストが百パーセント守られていなければならないというわけではないと思います。要は国民のための政治をするかどうかでありましょう。

大型トラックが走れば、その分、道路は傷み、修理には相当の費用がかかると聞いています。貨物輸送は鉄道や船舶の方が向いているといえましょう。前原誠司新国土交通相は国会議員有数の鉄道ファンでもあり、「海洋基本法フォローアップ研究会」世話人として船舶など海洋産業の振興にも取り組んでいるそうです。人気取りではなく、真に国民の利益になる政治をしてもらいたいものと思います。

民主党がもし人気取りマニフェストに捉われれば、矛盾が噴出し、次回の総選挙では敗者となるでしょう。しかし民主党が民主党を捨てて、民主党のためではなく国民のための政治をすれば、そこで初めて責任政党といえましょう。

道元禅師の『正法眼蔵随聞記』に「学道の人は、吾我(自分)の為に仏法を学することなかれ、ただ仏法の為に仏法を学すべきなり」と説かれています。どの世界でも、とかく自分のためにと私心を持ち込みがちですが、まして税金で暮らす議員諸氏には心していただきたいものと思います。(平成二十一年十月)

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。