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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第30話  阿修羅    

 古代インドの神々を統率していた神は帝釈天といい、阿修羅(あしゅら)は統率されていた一神格です。

阿修羅には舎脂(しゃし)という娘があり、いずれ帝釈天に嫁がせたいと思っていましたが、そうとは知らない帝釈天は舎脂を力ずくで奪い、凌辱しました。怒った阿修羅は帝釈天に戦いを挑みました。

一方、舎脂は、戦の最中にも関わらず、逆に帝釈天を愛してしまい、阿修羅はそのため更に逆上し、争いは天界全体を巻き込む大戦乱となりました。

このため阿修羅は復讐に燃える悪鬼とされてしまい、勝てる筈もなく敗れた阿修羅は天界から追放されてしまったのです。

ところで、阿修羅と帝釈天はどちらが正で、どちらが悪でしょうか。

阿修羅は我が娘を陵辱した相手を懲らしめようとしたのであり、帝釈天は他神の娘を陵辱したのですから、阿修羅は正しく、帝釈天は悪であるはずです。

しかし、阿修羅の娘である舎脂は帝釈天の正式な夫人となっていたにも関わらず、戦いに目を奪われた阿修羅は相手を赦す心を失ってしまったのです。

つまり、たとえ正義であっても、それに固執し続けると善心を見失い妄執の悪となってしまうという教えを読み取ることができましょう。

仏教では死後に生まれかわる世界を六道世界(天界・人間・阿修羅・畜生・餓鬼・地獄)と説きますが、天界を追われた阿修羅は、正義を振りかざす妄執の悪鬼として人間界と餓鬼界の間に置かれたとされています。

地獄・餓鬼・畜生よりはましだが、復讐の鬼となっている姿は人間以下だという意味が込められているのでしょう。

興福寺の国宝・阿修羅像は有名ですが、あのお顔はどこか神経質そうな顔をしています。

 六月十三日の毎日新聞・朝刊一面トップに「鳩山総務相を更迭」という見出しが躍っていました。

鳩山邦夫総務相が十二日午後、日本郵政社長人事を巡る混乱の責任をとり、麻生太郎首相に辞表を提出し、受理されたことを報じるトップ記事です。

同紙は、首相が同日午前に鳩山氏と会談した際、西川善文社長が鳩山氏に謝罪することで続投を認めるよう求めた妥協案を示したが、鳩山氏が拒否したため、事実上首相が更迭した形となった、と報じています。

鳩山総務相は首相に辞表を提出し首相官邸を出た直後、「今の政治は正しいことを言っても認められない」とも言っていました。

鳩山さんは今年六十歳、還暦のおじさんは噛み付く人が多いと言いますが、「還暦阿修羅症候群」とでも呼ぶべき病に仲間入りしたのでしょうか。

小生も今年六十二歳になりますが、未だに同症候群が抜けていないようです。 (平成二十一年七月)

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。