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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 3 話  種子戦争    

今月は、福岡正信著『自然に還る』(春秋社刊、平成5年)からの抜粋文です。

「米が余る日本に米の輸入をせまる真の目的は何か。白い米の自由貿易は単に口実で、むしろ、種子戦争といわれる種子が目的ではないのか。

私はなぜアフリカ全体が簡単に武力侵略に屈服し、植民地になったのか不審でしたが、ソマリヤなどを廻って、欧州人に従属することとなった重要な要素は、武力よりも、貿易立国の美名による植民地化政策による自然破壊、農業崩壊であったと考えるようになりました。

具体的にいえば、国を富ますためといって、外貨を獲得するために有効な作物が奨励された。その対象はコ−ヒ−、紅茶、砂糖、コ−ン、ピ−ナツ、綿に限られ、他の自給用の穀物や野菜は栽培が禁止されたことに始まるのです。自給用の作物の種がなくなれば、いや応なく農民は支配者の命ずるままに(支配者に)有利な作物だけ作らざるをえなくなり、単一作物の連続では大地も次第に衰亡し、それと共に農民の生活も苦しくなるだけなのです。

私は今のアフリカには緊急用の食糧援助とともに、自立・自給作物用の種を贈りたいと思うのも、そのためです。種さえあれば、エチオピヤやケニヤも果樹園、野菜、穀物の宝庫になります。かつてフィリピンが、米国の植民地になったのも、米作を放棄して、貿易商の甘言にのり、砂糖やコ−ヒ−、花造りに転換したのが、出発点だったと聞きます。日本もまた同じ軌道にのせられているのでなければよいのですが・・・。

食糧品は、本来商品化を目的とする物品ではないのです。真に役立つ食品は、本来自然の産物で、各国の自然風土が産み出したもので、その地に生まれた人間とは切ってもきれないものなのです。各国が自給自足を目指すことは、単に国の安全確保のためというより、民族の文化、生き方、働き、宗教に直結する命綱なのです」(平成6年12月)


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