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なるほど法話 海 潮 音
社会 第29話 主体的な政治を
内閣府が二月十六日に発表した08年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報によりますと、実質成長率は年率換算で前期比12.7%減と、第一次石油危機(74年1〜3月期)の年率13.1%減に次ぐ歴史的な落ち込みとのことです。
その原因について「最大の原因は、輸出の急減。米金融危機を発端とした世界同時不況が、過度に輸出に依存する日本経済構造を直撃した。・・・日本経済は石油危機以上の「戦後最大の経済危機」(与謝野馨経済財政担当相)に突入した形だ」(『毎日新聞』二月十七日、朝刊)と報じられています。
私は毎日新聞が指摘する「過度に輸出に依存する日本経済構造を直撃した」という点に特に注意したいと思います。
確かに日本は、資源は乏しく、国土は決して広いとは言えないのですから、明治以来、科学技術立国を目指してきたのは誤りとは言えないでしょう。
しかし、ものごとにはバランスというものがあます。「過度に輸出に依存」では今回のようなことになるのだと思います。
戦後の日本は大切な農業を捨ててまで、儲かる工業を選んだように見えてなりません。
自然農法実践家の福岡正信さん(1913-2008)は、ご自身の農法を不耕起、無肥料、無農薬、無除草を特徴とする手間がかからず安上がりな自然農法だと自負されていたようです。
全国各地の大学から農学部の教授が視察にこられたそうですが、一向にご自身の農法が日本に広まる様子はなく、不審に思っておられたところ、ある年、愛媛県で二番目の収穫率をあげられたとき、表彰する側の農協の会長さんから、「あなたの農法では表彰する訳にはいきません」と言われたそうです。
これで自分の農法が普及しない理由がわかったと御自身の著書『自然農法 わら一本の革命』(春秋社、1975年)に書いておられたのを思い出します。
福岡さんの右の著書が出てから既に三十年以上が経っています。楽な上にお金もかからず収穫率まで素晴らしい農法が、大学の先生にも知られていたのに、今日、トラクター・化学肥料・農薬・除草剤を大量に使うお金のかかる農法が普通となっているのは、とにかく儲かる工業を第一とし、日本人の食をあずかる大切な農業までをも工業製品の使用の場としか考えていないからだと言われてもしかたないでしょう。
やむをえず、ご自身の自然農法の普及の場を海外に求められた福岡さんは、一九八八年、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞されました。
過度の輸出依存、農業を無視した工業第一主義といった日本の政治はここらで改めてもらいたいものと思います。(平成二十一年三月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。