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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第28話  自覚ある政治を    

 世界的な金融・経済危機が叫ばれ、不況による雇用情勢の悪化が進む中、『毎日新聞』(一月二十五日、朝刊)に「農林漁業就労相談1カ月で3000件超」という見出しの記事が載りました。

「1カ月で3000件超」というのは、農林水産省や関連団体が、派遣切りなどの雇用問題に対応するために設けた窓口への相談件数のことで、雇用情勢が悪化する中、農林漁業への就労を希望する人が急増したということです。

これは食料自給率40%に加えて休耕田・耕作放棄の問題を抱えるわが国にとって歓迎すべき出来事だろうと思います。

 そもそも、わが国では、戦後、農地改革によって大量に発生した自作農家のために、食管法(食料管理法)によって米は政府が全量固定価格で買い上げる政策を取りました。

その後、日本人の食事の欧風化などに伴って米の消費量が減ってきたのですが、政策変更をしなかったため、政府は過剰な米の在庫を抱えることになりました。

この在庫を減らすためには、稲作の保護政策を見直せばよいと思うのですが、そうではなくて米の生産調整、即ち、減反政策を打ち出したのです。

これも転作奨励金という補助金で推進されました。どちらを向いても補助金で事を進めようという日本政府の政策です。

常識的には保護政策を見直す方向に行くはずなのに、そうしなかったというのは、そうしたくなかったということなのでしょう。

転作奨励金に向けられる予算は減少の一途をたどり、その結果、休耕田や耕作放棄の問題が顕在化しているのが現状です。

 このような中、金融危機に発する雇用の悪化、農林魚業への就労希望者の増加、そして食料自給率向上の問題といった諸問題に休耕田・耕作放棄の問題を重ね合わせれば、誰でも考え付くと思うのですが、やっと政府は

「食料自給率向上などの課題に対応するため、農政改革担当相(仮称)の設置を検討していることを明らかにした。石破茂農相が兼任する方向で、官房長官や農相ら6人程度の関係閣僚会議も設ける方針。政府は07年度で40%の食料自給率(カロリーベース)を10年後に50%に引き上げる目標を掲げており、その達成へ向けた農林魚業の体質強化やコメの生産調整(減反)見直しなどを幅広く検討する」(『毎日新聞』一月二十一日朝刊)

とのことです。

工業製品を輸出することだけに頼らない、そして環境問題を考慮した自覚ある大人の政治をわが日本政府に望みたいものと思っています。

そして、それを担う政治家を選ぶのは私たち有権者であることも忘れないようにしたいものと思います。  (平成二十一年二月)

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