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なるほど法話 海 潮 音
社会 第26話 不祥事
今年も最後の月になりました。一年を振り返りますと色々な事がありました。
一国の総理大臣が突然、政権を投げ出したかと思うと、野党第一党の党首が与党との党首会談の後、記者会見まで開いて代表職の辞任を表明したかと思うと、その二日後には辞意を撤回したり、まことに国民は唖然とするばかりでした。
そのような中で、私たちが口にする食品についての不祥事が目立ちました。
不二家の消費期限切れ原料使用(一月)、ミートホープの牛肉ミンチの品質表示偽装(六月)、石屋製菓の「白い恋人」賞味期限偽装(八月)、赤福の製造日偽装(十月)、御福餅の表示不正(十月)、比肉鶏の表示偽装(十月)、船場吉兆の表示偽装(十月)など挙げれば限がありません。
そしてついに十一月十八日の「毎日新聞」朝刊一面に「食品偽装・27都道府県で発覚」という見出しの記事が掲載されました。
今やすべての食品の表示は偽装ではないかと疑ってかからねばならない事態となったのです。
ところで、このような「不祥事」の中身はというと、不正行為や犯罪などということになるのですが、これを一般の人が行った場合は不祥事とは言わないようです。
不祥事と言う場合は、一定以上の社会的な立場を持つ人(たとえば政治家、公務員、何らかの著名人など)、または企業・団体などが起した、社会の信頼を損なわせるような出来事を言います。
このような不祥事を何故に社会的影響力を持った個人または団体が起すのでしょうか。
その原因について、利益最優先、隠蔽体質、独裁体質、上層部の絶対権力、同族経営、過去の栄光への固執などが指摘されているようですが、これらはいずれも個人または団体の自己中心的体質が根本に横たわっていると考えてよかろうかと思います。
社会的責任を果たすことによる「誇り」よりも利己的な「金銭欲」の満足に大きく傾いているということでしょう。
目を覚ますべきです。日本人が責任を果たす誇りを心の底から失っているはずがありません。
目を覚ましさえすれば湧き上がってくるでしょう。報道機関も金銭欲に流された悪ばかりを報道するのではなく、誇りに満ちた善を大いに報道すべきではないでしょうか。
秋も深まり冬の気配のしてきた今、柊(ヒイラギ)の白い花が満開です。
柊は古くから邪鬼の侵入を防ぐと信じられ、玄関先や庭に植えられました。葉のとげと純白の花との二つが相まってそのような力を持つのでしょうか。
利己的な金銭欲の邪鬼を払わねばなりません。柊のとげと花が邪鬼を払ってくれることを祈っています。 (平成十九年十二月)
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