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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第18話  イラク戦争とは何か    

4月L日の新聞は「イラクに侵攻した米軍は9日、首都バグダッドを陥落させ、フセイン体制は崩壊した。(中略)米英軍は攻撃開始後M日目でフセイン体制を打倒し、勝利を確実にした」(毎日新聞)と報じています。

この戦争で一体何人の死傷者が出ることになるのか分かりませんが、比較的短期間に終結しそうな点はまだしも救いかと思います。

9日からのトップ見出を毎日新聞を使って並べますと、「米英軍「大統領潜伏先」を空爆」(9日)、「バグダッド無政府状態」(N日)、「フセイン体制崩壊」(L日)と日をおかずに続きますので、どうも米英軍が「7日午後(日本時間同日夜)、フセイン大統領らが潜伏中との情報があった同市内の施設に地中貫通型爆弾によるとみられる空爆を行った」ことで決着が付いたように思われます。

ところで、今回の戦争が始まった理由ですけれども、もともとは湾岸戦争に端を発するでしょう。そして同時多発テロにより米国民の意識が一変し、「悪の枢軸」という言葉が盛んに使われるようになりました。独裁者と大量破壊兵器が結びつくほど危険なものはないというわけです。

そこで国連の査察団がイラクに入り、大量破壊兵器開発の証拠探しをしましたが、十分な成果が上がらなかったため、米国は英国と共にイラクに対し大量破壊兵器開発を白状する期限を一方的に設定し、国連という唯一の世界規模の民主的決議機関の決定なしに、イラクが期限内に白状しなかったからという理由でイラク攻撃を開始しました。

イラクのフセイン大統領は独裁者だと言われています。一国がフセインという一人の男の思うままになっていたのですから、これはやはり危険なことと言うべきでしょう。一方の米国は民主主義を売り物にした最も開かれた国だと言われています。

しかし、個と全(個が集まって全体を構成する)という考え方から眺めますと、独裁者とは、一個人(個)に決定権があって国民(全)にはない姿であり、民主主義とは、一個人(個)にではなくて国民(全)に決定権がある姿と言えましょう。

米国は確かに議会(国民)に決定権がありますから民主主義の国ですが、「一個人と国民」の段階より一段上の「ある国と世界」の段階では、米国(個)に決定権があって国連(全)には無いというのですから、個にあって全にないという独裁者と同じ構造になっています。そうすると、米国は民主主義の顔をした独裁国と言われても仕方がないことになりましょう。

今回の戦争は、独裁者と独裁国の故に起こった戦争と言えそうです。(平成15年5月)

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