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なるほど法話 海 潮 音
社会 第16話 イラク問題で思う
二月十四日はバレンタインデーです。今年の場合は、国連監視検証査察委員会のブリクス委員長らによって国連安保理への追加報告がある日ですから、浮かれている場合ではありません。二月五日にはパウエル米国務長官によってイラクによる大量破壊兵器の開発を示す新証拠なるものが提示され、戦争か、平和的解決か、瀬戸際の緊張が一気に高まっています。
『毎日新聞』では、「イラク問題とニッポン─私はこう考える」と題して識者の意見を連載していますが、十四日の紙面で、元経済企画庁長官・田中秀征さんは
「もちろん、イラクは今のままではいけないが、新しい国連決議を経ないで米国が独自の判断で武力攻撃に踏み切れば、一番傷つくのは米国だ。」「米国が力に走りがちな場合に抑制するのが、同盟国として友人としての日本に一番求められる。」「それをやっていると思えない。米国が決めるのを受け身で待っている。『新しい決議が望ましい』という言葉は、単独判断での武力攻撃への支持を排除していないと受け止められる。」「小泉(純一郎首相)さんの場合は足まで結ぶ二人三脚で米国と一体化しているから、片方が転ぶと、もう片方も転んでしまう。片方が転んでも、片方が起こしてやるのが本当の同盟関係だろう。」(引用文中の『新しい決議が望ましい』とは、二月五日のパウエル長官の新証拠提示を受け、六日の衆院予算委員会で小泉首相が「新しい安保理決議がなされることが望ましい」と述べたのを指す。筆者注)
と述べておられますが、全くその通りだと思います。
50数年前、米国は日本を握りつぶしましたが、米国はその手を徐々にゆるめていき、自分の手のひらの上で日本を元気にしていきました。そして経済成長以来、まるでお釈迦様の手のひらで孫悟空が暴れ回るように、日本は米国の手のひらで暴れていただけなのではないでしょうか。早く米国の手のひらから飛び降り、地に足をつけて自分の立場で考えるべきだと思います。
ところが、十八日の国連安保理・公開討論で日本の原口国連大使は米国が目指す武力行使容認の新決議への支持を表明しました。これは「武力行使」という米国の手のひらを皆で国連の手のひらにしようじゃあないか、と言っているように見えます。日本は米国の手のひらから飛び降りるどころか、米国の手のひらこそ世界だと思っているようです。
今の日本は簡単には飛び降りる訳にはいかないかも知れませんが、自立するためには飛び降りねばなりません。いくらお金を出しても米国の手のひらに乗ったまま出したのでは笑われるだけでしょう。(平成15年3月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。