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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第14話  少子化対策    

今年7月14日に発表された厚生省の国民生活基礎調査によると、「生活が苦しい」と答えた人は、子供のいる世帯では6割を占めたそうです。全体平均で53%、高齢者世帯では46%ですから、現代の日本での子育ては大変しんどいことになります。

ついでに世帯一人当たりの年収で見ても、全体の平均が223万円、高齢者世帯が211万円なのに対し、子連れ世帯は171万円しかありません。母子だけの世帯だと、わずか88万円になるそうです。

これでは、今の日本の社会は「子供を産むな」と言っているようなものでしょう。このような数字を見る限り、既婚女性が仕事を持つようになったから、教育にお金がかかるから、といった単なる親の都合で少子化現象が起こっているのではないことが明らかです。やはり政治の問題として考えるべきかと思います。

そこで、「子を産み育てる女性に国家的支援を」と訴える儒教に造詣の深い加地伸行博士(甲子園短期大学学長・大阪大学名誉教授)の提案をご紹介いたしましょう。

博士は、平成10年の時点で月額5000円の子供への手当が出ていることをご承知ですが、はした金で問題にならないとうち捨てられます。そして、「第一子に3万円(あるいは2万円)、第二子に4万円(あるいは3万円)、第三子には5万円、第四子以下には各1万円を、満18歳の年度末まで、毎月支給せよ」という仮称「寿手当」をご提案です。

これは、少子化に歯止めをかける長期的政策であると同時に、子供のための消費としてただちに経済の場に出てくるので、景気浮上につながる短期的政策でもあると自信満々です。

問題は財源ですが、寿手当の平均を5万円と見て年間60万円、支給対象世帯を2000万世帯と見ると、年間12兆円です。これを賄う財源として国債(仮称「寿国債」)を18年間発行し、かわりに公共投資用の国債は廃止する。併せて財政再建の努力もする。そして18年後から、毎年の世代が180万人から200万人に迫る人口増となって登場する。

勿論、それまでの18年間に、毎年12兆円の寿手当の内需が日本経済の景気回復をうながし、18年後には200万近い新労働力が社会を支えていくという筋書きです。

これは経済だけの問題ではありません。少年犯罪をはじめとする日本の社会の歪みを正す基礎作業となるものと思います。(平成12年10月)  


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