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なるほど法話 海 潮 音
社会 第13話 少年犯罪に思う
近年、少年の犯罪が目立って多くなりました。特に今年は十七歳の少年の殺人事件が立て続けに起りました。学校帰りに見知らぬ主婦を惨殺した十七歳。十五時間にわたるバスジャックの末、六十八歳の主婦の命を奪った十七歳。金属バットで母親を殺した十七歳。
彼らが殺人という凶悪犯罪に及んだ直接の原因はそれぞれでありましょうが、その根底に共通の何かがあったように見受けられます。
主婦殺しの少年は一歳半のとき両親が離婚し、父親はいたものの祖父母が両親がわりで、特に祖父は厳しかったようです。何の関係もない主婦を惨殺することによって、厳しかった祖父母たちを殺人者の家族という烙印を押して仕返しをしたかったのではないかという観測もあるようです。
金属バットで母親を殺した少年は、同じ仲間の野球部員を学校で大けがをさせた後、自宅に急行して療養中の母親を殺害していますが、逮捕後の供述では「親に迷惑がかかると思ってやった」と言っていたものの、その後の調べで母親殺害は以前から計画していたらしいことが明らかになり、少年は殺害の理由を母親の過干渉がうるさくてたまらなかったと供述し、押収されたノートには、母親の実名入りで「狩った」という記述まであったそうです。
親が子を思う心は今も昔も変わらないと思います。昔は尊敬する人として親を挙げた子供も結構いたように思います。今は、子への親の思いをうるさいと思い、はね除けたいと思うというのは、一体何がどう変わったというのでしょうか。
一つには少子化という問題もかかわっているのではないかと思います。バスジャック少年は妹が一人いたようですが、あとの二人は共に一人っ子のようです。子供が一人だと親の期待はいやでもその子に集中します。期待があまりに過剰だと子供はうるさいと思うようにもなるでしょう。
また、一人っ子だと、生活全体が至れり尽くせりですから、兄弟にもまれて成長すると言うこともありません。うるさい親に対しても我慢するという心も育ちようがない訳です。
少年犯罪に対して直接の対策も勿論大事ですが、その遠因となっているであろう少子化問題に対しても、もっと真剣に考える必要があるでしょう。急がないと取り返しがつかなくなる重要な問題です。
(平成12年9月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。