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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 12 話  林野庁というところ    

今、国会では「住専」の問題で大変ですが、先日、民放テレビで林野庁に関する報道を見て、そこがまた空恐ろしいところであることを知りました。

『広辞苑』で「林野庁」を引くと「国有林野等の管理・経営、林業の発達改善のための事務を主たる任務とする農林水産省の外局。その地方部局として営林局や営林署がある。」とあります。そして林野庁が管理する国有林は、国土環境保全上重要なところにあり、これを大切に維持管理していかなければならない訳ですが、その管理者であるはずの「林野庁」自身が国民の見えない所で乱伐しているという報道です。

どうしてこのような事がおこるのでしょうか。30年間にわたる国有林との付き合いの中で「黙して語らず」にはいられなくなり筆を取ったといわれる植村武司氏の著書『林野庁解体』(日本経済評論社、1994年、1854円)によると、林野庁というところは、その運営は財政によるのではなく、国有林から産出される木材を主な収入源とする独立採算制(昭和22年発足)で、40年代半ばまでは木材が好況だったからそれでよかったのですが、木材が不況になっても制度はそのまま放置されたため、今や赤字が3兆円にまで膨れ上がり、どうしようもない状態なのだそうです。

その構造を平成6年度の予算請求の中に見ると、人件費=2200億円、償還金・支払利子=2718億円、これに対し収入(林産物収入)はわずか1400億円で人件費の63%しか賄えないため、国民の大切な国有林自体に手を出し、900億円分もの林野等を売却して帳尻を合わせようとしていますが、更に償還金・支払利子の返済のため2950億円もの借入金を計上しなければならないという構造です。

従って少しでも収入を増やそうとすれば、国有林の管理よりも経営(職員の人件費確保)のための乱伐になるという訳です。日本の政治はあらゆる分野で旧体制のままのようです。(平成8年3月)


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