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なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 10 話  景気対策    

私は経済のことはよく分かりません。分からなければ黙っておればよいのですが、少しばかりの無責任な発言をお許し下さい。

日本経済は不景気の出口が依然として見えなくて皆いらいらしているようです。そのため、細川内閣は6兆円規模の減税をして景気対策を計ることになりました。国民にお金を回すから物を買ってくれということのようです。

皆が物を買うようになれば景気は回復するのかも知れません。しかし、今、皆が物を買わないのは何も必要な物まで我慢して買わないでいるというのではなく、贅沢言わずに使える物は使えなくなるまで使いましょう、と言う意味で買わないということなのではないかと思っています。これは大変結構なことなのではないでしょうか。

以前、と言っても10年以上も前のことですが、こんな話を聞いたことがあります。小学校での授業中、先生が紙を一枚づつ生徒の机の上に配りました。ある生徒の紙が風で飛ばされ床に落ちました。ほとんど汚れてもいないので、先生はそれを使うように言いました。しかし、その生徒は新しい紙を要求しました。先生が「もったいない」と言いますと、その生徒は、紙をどんどん使えば、紙はどんどん売れて、紙を作る労働者は助かるんだ、と答えたということです。

小学生でもこんな答方をする者がいるのかと感心してはいられません。今、政府が打ち出し、そして経済界が歓迎している景気対策とは、この小学生の答と同じ発想なのではないでしょうか。乱暴な言い方をすれば、無駄使いの奨励です。

無駄使いによって地球環境が破壊されても、それはまた後で考えようということなのでしょう。環境破壊の問題だけではありません。心の荒廃はもっと深刻な問題となるでしょう。「少欲知足」を説く仏教の立場に立てば、経済のためなら欲望追求おおいに結構といった風潮に、このまま黙っているべきではないと思うのですが。(平成6年3月)


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