このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。([開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。)


なるほど法話 海 潮 音      


社会 第 1 話  むさぼらぬ    

世界銀行報告によると、世界の栄養不足人口は7〜8億人もいるそうです。その同じ世界に穀物の収穫は年間18億トンあるそうで、これは百億人以上の人間を養って余りある数だそうです。世界の人口は数年前に50億人を超えたところですから、二倍の余裕が有る計算になります。それなのに、7〜8億人もの栄養不足人口がでるというのは一体どうゆうことなのでしょうか。

その理由の第一は、先進国の我々の飽食・肉食があげられるそうです。食肉獲得のために、膨大な量の穀物が家畜の飼料として消費され、人間の口に入る穀物がその分減るという訳です。

穀物の話ではありませんけれども、ついでに申し上げると、日本人はアフリカまで出かけて行って、イワシを食べたいと思っているアフリカ人を尻目に大量のイワシを豚の飼料として持ち帰り、それを豚肉に変えたときは六分の一のタンパク質に減っているという例もあります。

第二は、途上国においては、自分達が食べるための食料生産よりも、先進国へ輸出するための食料生産の方が多くなってしまい、結局、自分達の口に入る分が足らなくなってしまうという訳です。そのほかにも色々と理由はあげられると思いますが、つまるところ、先進国にいる我々が贅沢三昧しているところに原因があるようです。

曹洞宗の開祖、道元禅師のことばに「布施というはむさぼらざるなり」とあります。また、昭和の禅者、沢木興道老師にも「むさぼらぬという一事をもって十方に供養する」というのがあります。困っている人へ手をさしのべることは必要でしょう。我々もカンボジア難民へ「慈愛の古着運動」を行っています(古着が豊富にある事自体問題なのですが)。しかし、その前に、我々自身が「むさぼらない」ことによって、世界の多くの人を救うことになるのだという事をもう一度考えてみる必要がありそうです。(平成3年8月)


音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。