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なるほど法話 海 潮 音      


自然 第7話  進化とは何か(上)    

 『地球大進化4大量絶滅』(NHK出版)を読み進化の意味を考えさせられましたので感想を書いてみます。

 地球の歴史において大量絶滅(大規模な生物の絶滅)が5回ありました。そのうち6500万年前の恐竜が絶滅したときは、当時存在した生物種の70%が絶滅したといわれています。

最もひどかった2億5000万年前の絶滅では90%以上の生物種が絶滅しました。その時の引き金となったのは中央シベリアで起きた巨大噴火で、現在の大気に含まれる二酸化炭素の15倍の量の二酸化炭素が放出されたといわれています。

この二酸化炭素によって地球全体が急激な温暖化に見舞われました。また二酸化硫黄も放出され、それが酸性雨となって植物を枯らし、光合成による大気中の二酸化炭素を吸収するシステムが崩壊し温暖化がさらに進みました。

この温暖化によって海底の地下に固体として押し込められていた大量のメタンガス(二酸化炭素の20倍の温室効果をもつ)が噴出し温暖化は果てしなく進んだのです。

その結果、赤道付近では8〜9℃上昇して灼熱化し、生物が住めなくなりました。極付近では20〜25℃も上昇したといわれています。

放出された大量のメタンガスは酸素と結合して二酸化炭素と水蒸気となり、大量の酸素が消費され、そのときの大量絶滅以後、約1億年にわたって酸素濃度10%という過酷な低酸素時代(現在は約20%)が続きました。

この低酸素時代を生き抜くために気嚢(きのう)を使った極めて効率のいい呼吸システムを進化させた生物がいました。やがて低酸素時代が終わると超効率呼吸システムによる余剰酸素を体の大型化に使ったのが恐竜であり、飛行に使ったのが鳥類でした。

また低酸素時代に出現した哺乳類も呼吸システムを工夫しました。トカゲなど爬虫類は腹部にも肋骨がありますが、哺乳類は腹部の肋骨をなくし横隔膜を設けて複式呼吸を可能にし、効率のよい呼吸システムに改良したのです。

哺乳類は低酸素時代終了後は恐竜や鳥類とは違って余剰酸素を脳の発達に使いました。人間の脳は重さで全体重の2%なのに酸素消費量は20%に達します。

 約1億年続いた低酸素時代という厳しい環境に対し、生物は自らを変えてその環境を生き抜こうとしました。これが進化です。進化とは「環境への適応化」といえましょう。

その後の大型化や飛行や脳の発達は酸素が増えるという環境の変化の贈り物に過ぎません。人類の脳の発達も例外ではないのです。しかし、この脳の発達を「進化」と呼ぶとき、贈り物であることを忘れてしまいそうです。 (平成18年6月)

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。