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なるほど法話 海 潮 音      


自然 第 3 話  アオサギ    

先日、自分の部屋で本を読んでおりましたら、窓の外でジャブンという音がしました。私の部屋の窓のすぐ下に小さな池がありまして、もう十年以上も生きている鯉と金魚(共に二十センチくらい)のつがいがいます。

毎年卵を生みますが、なにしろ小さな池ですので、ほっておくと、生んだ卵を自ら全部食べてしまいます。これを世話して育てるにはなかなか骨が折れますが、幸い一昨年も昨年も成功し、合わせて十匹くらいの子供らが元気な姿で一緒に泳いでいます。

一年もたちますと十センチぐらいになりますので、一昨年の分はかなり大きくなって、子供という感じは致しません。産卵の時期は春ですが、まだ寒い時期から雄の鯉が雌の金魚を追い始め、何しろ狭い池ですから、雌の金魚は逃げ切れず、傷つけられる場合もあるのです。

そんなときにジャブンと音がしますので、もう始まったかと思って窓を開けましたら、全然別の光景が目に飛び込みました。

大きなアオサギが私の目の前に突っ立って、大きくなった一昨年の緋鯉をくわえ、今にも飲み込もうとしているときでした。突然の光景に見とれていましたら、なるほどうまく飲み込みます。飲み込まれた緋鯉を卵から育てた者としては感心ばかりもしていられないのですが、その後、境内を悠々と歩くアオサギを見ていますと、追っ払う気にもなれないまま、これが自然の摂理というものかと、腕組みをするばかりでありました。

人間の気配のする池に、鯉や金魚を失敬しに来るところを見ると、冬場に川で魚を捕るのもなかなかなのかも知れません。緋鯉を丸飲みする光景は、人間には残酷に見えますが、アオサギにとっては生きる営みにすぎないでしょう。人間も他の動物を殺して食べているわけで、なんら変わるところはありません。

しかしスーパーでパックに入った牛肉を食べている限り、牛を殺して食べているのだという実感はないでしょう。飽食時代にあって食べ物を大事にしない昨今、アオサギの光景は考えさせられるところがありました。(平成11年2月)


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