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なるほど法話 海 潮 音      


自然 第 2 話  毛  虫    

新緑がしっかりしてきて青葉が光っているこの時期、椿などの葉にビッシリと毛虫が群がっているのを見かけます。

ぞっとするのですが、そこをこらえてよく観察してみて下さい。横一列にきれいに並んで群がっています。勿論、毛虫たちは椿の葉を食べているのですが、なぜ横一列にきちんと並んで食べているのかご存じですか。子供電話室のようですが、しばらく我慢してお付き合い下さい。

横一列に並んでいる理由を考える前に、毛虫たちがバラバラに好きかってに葉を食べている光景を想像して下さい。葉の先端部分で食べている毛虫もいれば、葉の付け根付近で食べている毛虫もいます。付け根付近で食べている毛虫の食べ跡がだんだん大きくなると、いずれその葉の先端部分は、そこで食べていた毛虫もろともおっこちてしまうでしょう。それは大変不都合です。

どの毛虫もそのようなことにならないよう、安全に、また、葉を無駄なく食べるために、横一列に整然と並んで端の方から付け根方向にさがるように食べているわけです。

毛虫には、それが一番合理的だなどと考える能力はないでしょうから、何かの刺激で横一列に並んで食べる習性が身に付いているのでしょう。このようなことを表す「自然の摂理」という便利な言葉もあります。

ところで、考える能力を授けられている人間が、もし毛虫になって椿の葉を食べていたとしたらどうでしょう。本物の毛虫のように整然と並んで皆が仲良く食べるでしょうか。現実の人間界を見渡すと、とてもそのようには思えません。それどころか、そら恐ろしい光景で葉を食べている様子が目に浮かびます。どうしてそうなのでしょう。人間の考える能力は、そら恐ろしい光景をつくり出すために授けられたものではないはずです。何のためにこの能力があるのか、毛虫をじ−っと見ていると何か教えられる気がしてきます。(平成10年6月)


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