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なるほど法話 海 潮 音      


自然 第1話  モンゴル人の知恵    

情報源がテレビで恐縮ですが、NHKの「特集生きもの地球紀行」を見ていましたらモンゴル人と狼を取材した興味深い場面がありました。

モンゴル人は、見渡すかぎり草におおわれたモンゴル平原で、羊などの家畜を飼って生活をしているようですが、家畜の放牧には狼が大敵です。この狼の退治がモンゴル人の大切な仕事の一つとなっています。

モンゴル人は、狼の鳴き声をまねて狼を巣穴から呼び出すことができるのですね。遠くの巣穴から出てきた狼は老モンゴル人の声に答えて遠吠えを始めました。老モンゴル人は巣穴から出てきた母狼の行動を十分に観察し、巣穴に戻らない時間帯をチェックしたあと、狼の子供を捕まえに巣穴に入っていきました。巣穴には四匹の狼の子がいたのですが、その老モンゴル人は三匹だけ捕まえ、残りの一匹は穴に残しました。

四匹とも捕まえたのではかわいそうだから一匹だけ残したのではないのです。一匹だけ残すのはモンゴルに昔から伝わる掟なのだそうです。そこには大切な意味が隠されていました。

もし狼を捕り尽くすと、家畜が狙われることがなくなり結構なことのように思えるのですが、そうなった場合、家畜たちのもつ伝染病が異常発生し、家畜が全滅するのだそうです。狼に捕まる家畜は、実は伝染病にかかっている弱ったものから捕まるのだそうで、適量の狼は家畜の医者の役目を果たすのだそうです。モンゴルの人々はそのことを知っていて一匹だけ残すそうですが、すばらしい智恵だと思います。

大自然は弱肉強食の厳しい世界です。その厳しさ故に自然界のバランスが保たれました。一方、人間は智恵を持っています。そのため他の動物に勝り、勝手もできて、人口も増えに増え、既に五十億を超えました。でも、人間の智恵の使い方は狼を駆逐する方向にあったのではないでしょうか。せっかく天に授かった智恵です。じっくりモンゴル人を見習いたいと思うのですが。(平成5年1月)


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