このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。([開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。)
なるほど法話 海 潮 音
生活 第8話 「わかる」ということ
「わかる」を漢字を使って書きますと「分かる」「解る」「判る」の三通りがあります。これら「分」「解」「判」という漢字はいずれも「わける」とか「ばらばらにする」という意味を持っていますから、「わかる」という言葉には「わける」という意味が含まれているようです。
また、私たちが日常的に使う「わかる」の意味として、辞書には「事物の意味、内容、事情、区別などが了解される」(小学館『国語大辞典』)と説明されています。
それこそわかったようでわからない説明ですが、「事物の」とありますから、「わかる」という言葉には事物という対象があって、それについて「わかる」主体、例えば「私」という人間がいることになりましょう。そして何が「わかる」のかと言えば、事物の「意味、内容、事情、区別など」です。
どのように「わかる」のかと言えば「了解」とあります。「了解」の意味は、同じ辞書に「理解して承認すること」とあります。「承認」とは同辞書によれば「正当であると認めること」ですから、了解する側の意志が含まれていることになります。
従って「わかる」とは、事物という対象の情報を一方的に受け取ることではなく、対象の情報と自分が持っている情報とを比べてみて、その結果、一致したときに「わかる」ということになるのだと思われます。
以上を総合しますと、「わかる」とは、対象の情報を他と区別し、或いは情報自体をばらばらにし、それらを自分の持っている情報と比較し、一致点を見出す等のことによって「わかる」のだということになりましょう。
持って回った面倒なことを申し上げましたが、「わかる」とはこのようなことだと言うことを確認していただきたかったからです。
ところで、先般、客人をタクシー観光にご案内致しました。松陰神社から松陰先生誕生地へ向かいました。
小高く見晴らしのよい誕生地に着くと、タクシーの運転手さんは「ここに来ると松陰先生がなぜ国禁を犯してまで外国に行こうとしたかがわかりますよ」と得意になって案内してくれました。
「ここから萩の町を見て下さい。萩の町が一望でき、向こうに日本海の水平線が見えるでしょう。松陰先生は生まれた時からこの景色を見ておられたんですからね。お客さんは皆言われますよ。『なぜ松陰先生が外国に行こうとされたかがわかった』て」。
この「わかった」は、話の真偽は別にして、先の面倒な解説の「わかる」とは違ってとても感覚的です。人にものをわかってもらおうと思えば、こちらの「わかる」でないといけないな、と反省しています。(平成15年11月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。