なるほど法話 海 潮 音
           
生活 第41話  鈴 虫
           
 ホームセンターに買い物に行きました。買うべき物を探しておりましたら鈴虫の声がきこえてきました。

今年の猛暑です。エアコンだけでは足りないとばかりに涼しげな音声までサービスしているのかなと思いつつ鈴虫の声を聞きながらセンター内を回っていました。
しかしどうもスピーカーからの声ではなく、ある所から聞こえてくるような気がしまして、ひょっとしたらと思い、どこから鈴虫の声が聞こえてくるのかなと、今度は鈴虫を探して歩き回りました。

鈴虫の声はかん高い声で周波数が極めて高いのでしょう。どこから聞こえてくるのかを定めるのが大変でした。

やっと見つけました。プラスチックの虫かごに入れられて売り物として並べてある鈴虫が鳴いていたのです。

なるほどと思いながらひととき虫の声に聞き入りました。そうこうしている内に、「そうだなあ、買ってみようかなあ!」と思うようになりましたが、ちょっと照れくさい気もしました。

待てよ、孫にせがまれたという場合もあるだろう、などと思ったり、色々躊躇しながら思いめぐらしたあげくに他の物と一緒に買いました。

虫かごに入った状態で売っているのですから、このままでもいいと思うのですが、一応、ネットで飼い方を勉強しました。

家内が私が鈴虫を飼い始めたことを外で話したようで、よそ様からこんな話を聞いてきました。

ある人が鈴虫を引き出しの中に入れたまま忘れてしまい、翌年の初夏にその引き出しを空けたら中から無数のちっちゃい鈴虫らしき虫が出てきて家中が虫だらけになったので鈴虫を飼うのは気をつけた方がよいという話でした。

まあ本当なんでしょうね。でも風流な虫という鈴虫のイメージとはかけ離れた話ではあります。

私は庭に面した縁側で飼っていますが、風呂上がりに鈴虫が鳴いてくれるといい気分にはなりますね。

虫の声を楽しむことができるのは日本人と中国人だけなんだそうです。日本のある脳生理学者によりますと、日本人は虫の声を言葉や音楽を聞くときのように左脳で聞くのだそうですが、欧米人は雑音と同じように右脳で聞くのだそうです。

欧米にも沢山の鳴く虫がいるのでしょうが、欧米人はそれに全く関心を示さないのだそうです。

日本では「秋の鳴く虫」は『万葉集』にも『源氏物語』にも登場し、鳴く虫をかごに入れて声を楽しむ風流は平安時代から貴族の間ではやったそうです。

江戸時代には「虫売り」が商売として成り立つようになったそうで、現代ではホームセンターで私が買いました。あなたも秋の夜を鈴虫で楽しんでみてはいかがでしょう。(平成三十年九月)