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生活 第26話  発酵食品
 今人気の「塩こうじ」を取り上げたNHKテレビ番組「あさイチ」を見ました。

 料理に塩を使うところをこの「塩こうじ」に替えると、うまみがぐんとアップするのだそうです。

 その秘密は、塩こうじにはグルタミン酸をはじめ、19種のアミノ酸が含まれているからだということです。

 「こうじドリンク」の話もありました。これは甘酒のことですが、酒かすを溶かして砂糖を加えた甘酒(アルコール分あり)ではなく、米こうじをぬるま湯で発酵させた甘酒(アルコール分なし)の方をいうようです。

 こちらの甘酒(こうじドリンク)については、同じNHKのラジオ第2放送「こころをよむ」の中で、小泉武夫さんが「食べるということ─民族と食の文化」と題して興味深い話をされています。

 甘酒は中高年の日本人であれば一度や二度は飲んだことがあると思いますが、どの季節に飲んだかと聞かれれば、冬と答えるでしょう。

 ところが江戸時代の風俗事典『守貞謾稿』(もりさだまんこう)(喜田川守貞著)には「夏月専ら売り巡るもの」とあり、夏に売られていたらしいのです。

 なぜかといいますと、江戸時代は今と違って、医者も薬も充実しておらず、お年寄りや病弱な人は暑い夏を乗り切れずに亡くなる人が多かったのだそうです。

 そこで、夏バテ防止の特効薬としてこの甘酒が飲まれたというのです。

 甘酒の甘みは、麹菌(こうじきん)が出すアミラーゼ(糖化酵素)がデンプンを分解してつくったブドウ糖で、甘酒はこのブドウ糖を20%以上も含んでいるのだそうです。

 さらに麹菌が増殖するときにビタミンB1、B2、B6、パントテン酸、イノシトール、ビオチンなどの栄養素を大量につくり、さらに麹菌は米の表面のタンパク質を分解して必須アミノ酸をつくるのだそうです。

 ですから甘酒を化学的に分析すればブドウ糖とビタミンとアミノ酸の混合溶液ということになり、現代の病院で栄養補給として使う点滴とほとんど同じ成分なのだそうです。

 驚きですね。「塩こうじ」にしても「甘酒」にしてもいずれも発酵食品であり、これらを口にする食文化は世界中にあるわけですが、際立っているのは東南アジアと東アジアなのだそうで、中でも日本は発酵食品大国だということです。

 1981年の癌学会で国立がんセンター研究所が発表した研究成果によりますと、味噌汁を毎日飲んでいる人ほど胃がんの死亡率が低くなるそうですし、癌だけでなく、動脈硬化、高血圧、胃潰瘍、肝硬変などによる死亡率も低くなるそうです。

 善玉菌による発酵(腐敗は悪玉菌のしわざ)は自然の恵みです。大切にしたいものと思います。 (平成二十四年三月)