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なるほど法話 海 潮 音      


生活 第22話  孫の成長    

 以前、小生の恩師が奥様ご同伴で我が家においで下さったことがあります。色々と話が弾んだ中で奥様が「孫って何であんなに可愛いんでしょ」とおっしゃったことが何となく耳に残っていました。

自分に孫が生まれ、そして徐々に育ってくるにつれ、あの恩師の奥様の一言が耳の中で段々大きくなるのを感じます。

這い這いをしたといっては手をたたき、立ち上がったといっては手をたたき、歩き始めたといっては手をたたきました。

ここまでは他の動物たちの赤ちゃんも一緒でしょうが、いや、一緒どころか、動物の赤ちゃんたちは生まれてすぐ歩くようですから、人間の方がだいぶ遅れているというべきでしょう。しかし、その後の成長ぶりは他の動物たちの比ではありません。

いうまでもなく、それは脳の発達にかかわる成長だからでありましょう。そして、その最初の劇的な成長の現われは「ことば」をしゃべるようになるということであります。

これがいつなのかということが気になって仕方がない、というのがじいちゃんばあちゃんの本音です。

ところが、わが孫の母親は意外と腹がすわっています。「私はいつしゃべりだすかは気にならない。どんな成長の過程があってしゃべり始めるかに関心があるから、毎日観察していてとても楽しい」といいます。「へーなるほどね」といって私は脱帽しています。

孫はまだ「マンマ」とか「マー」とかいう程度で、それは、「マンマ(ごはん)」であったり、「アンパンマン」であったり、「ユキダルマ」であったりですが、母親のいうことには、こちらの話しかけることはほとんど分かっているんだよ、とのことです。

実際、「お目めは」と聞くと、自分の目を指さしますし、「お耳は」と聞いても、確かに耳を指さします。お鼻もできました。お口もできました。ほっぺもできました。頭もできました。手もできました。爪までできました。なるほど、まず、しゃべる前に聞くことから言語を習得していくのだな、ということが解りました。

それにしても、自分たちも三十年前に子育てをしたはずなのに、そんなことは思いもよらなかったことだが、これは一体どうしたことだろうと考え込んでしまいました。

 ともあれ、孫はしゃべりだす日にむかって着実に成長しているようです。

それから、ことばの習得と同時に自我が芽生え始めているようで、一緒に遊ぶのはいいのですが、「可愛いね」といって顔を覗き込むと嫌がります。そのうち、すべてが嫌がられる日もやって来ることでしょう。孫自慢もこの辺で打ち止めとなりそうです。 (平成二十二年三月)

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。