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なるほど法話 海 潮 音
生活 第18話 松竹梅
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
お寺の庭に松の木があります。庭の松にしては大きい方でしょう。
どれくらいの年数が経ったものか分かりませんが、隣接して立っている庫裏の屋根の軒がコの字形に切ってあります。
なぜそうなのか考えてみますに、当山は明治七年の火災で山門と土蔵を除いて焼失しました。
再建に当り、本堂は萩藩校明倫館の聖廟を移築し、位牌堂は同四年に合併した末寺の本堂を解体し、その材料を使って建て(現在のものは平成五年新築)、庫裏は山口から萩に移築されていた旧円政寺の庫裏を更に移築し、寄せ集めで再建されました。
恐らくそのとき、庫裏の軒がコの字形に切り取られたものと思われます。松の枝が軒に当ったのでしょう。
普通は松の枝を切るところですが、庫裏の軒が切られました。よほど大切にされた松のようです。明治七年の段階で、既に立派な松に成長していたようです。
この松の自慢は、盆栽の松をそのまま大きくしたように形がいいのは勿論ですが、皮が大変厚いのです。一番厚いところで八〜九pくらいあります。森林組合の方も、萩一番と太鼓判を押しています。
以前住職をしておりました末寺から黄色の千両を少し株分けし、この松の根元に植えました。
廊下を通るたびに黄色く色づいた千両を眺めながら、黄色の実がついたままで正月を迎えられるかなと思っていると、ヒヨドリがやってきて一つ残らず食べてしまいます。今年はどうでしょうか。
同じ庭に梅の木があります。見事な紅梅をつけます。この梅にも逸話があります。
昭和六十二年三月十三日に先代住職が遷化しましたが、そのとき、この梅も先代について行ったのです。
この梅は早いときは元旦に一輪くらい花をつけます。その年に花がどうだったのか記憶にありませんが、四月二十三日の本葬のとき、御随喜下さったある御寺院様が「この梅は枯れていますね」と申されました。
見ると花の後に出るはずの葉が一枚もないのです。先代の部屋のすぐ近くにあったこの梅は先代について行ったようです。
でも次の年から少しずつ葉をだすようになり、今は元通りに木全体を赤く染めて春を告げています。
当山の庭には竹がありません。竹を植えるとはびこるからでしょうか。でも竹もなかなか風情があります。はびこらないように工夫をして四方竹でも植えたいものです。
昨年は暗いニュースばかりでした。竹を植えれば松竹梅が揃います。今年はめでたいことがありますように。(平成19年1月)
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