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なるほど法話 海 潮 音      


生活 第17話  ちまき    

 家内が京都に行った折に「ちまき」を買ってきました。細長い円錐形の餅を笹の葉にくるみ、藺草(いぐさ)で螺旋形にくくった古風なたべものです。

今まで食べたことはなかったように思うのですが、子どもの頃に「柱のきずはおととしの、五月五日の背くらべ、ちまき喰べ喰べ兄さんが、はかってくれた背のたけ・・・」とよく歌った海野厚作詞の「背くらべ」で「ちまき」の名前は知っていました。子どもの頃から名前を知っているというだけで、とても懐かしさを感じるものだと実感した次第です。

 『国語大辞典』(小学館)には「端午の節句に食べる習慣は、五月五日に汨羅(べきら)に入水した屈原をとむらって、その姉が餅を江に投じたことからはじまるという」とありますので、「ちまき」の起源は中国であり、五月五日は屈原の命日だったようです。

その後、この日は五節供(句)の一つである男子の節句、すなわち「端午の節句」(五日の節句)と呼ばれ、邪気を払うために菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を軒にさし、ちまきを食べる習慣となったとされます。

「ちまき」(粽)は「茅巻」とも書くようですが、これは、古くは茅(ちがや、イネ科の多年草)の葉で巻いたからとされます。ただ今では笹やまこもの葉が多く使われるようです。

このちまきに似たものに「笹団子」があります。笹の葉には殺菌効果があるため、『北越風土記』には戦国時代に武士たちの携行保存食として生まれたとあるそうです。これらが色々と重なって現今市販されている雑多な「ちまき」があるのでしょう。

 それにしても、家内の買ってきたちまきを、丁寧に藺草をほどき、三枚の笹の葉をめくって取り出し、おもむろに口にしますと、ウウンという感じでした。すぐにどんな味がするのか分からないのです。

二口三口と進みますと、やっとハハーンという、うっすらとした味が感じ取れました。どんな味がするのかどうも言葉では表現しがたい味というほかないようです。

素材はもち米をつかった団子のようですが、よけいな味付けをせず、素材の持つ味をそのまま味わって下さいといているようです。

この京都のちまきを食べてみて思い出すのは、現代の子どもたちが自然のままの柿や栗を欲しがらず、スーパーで売っている味の濃いお菓子ばかりを食べたがるということです。

ちまきという古風なお菓子を食べて感じることは、深みのある味というのは、ぶつけられたような味ではなく、心を澄まして探しながら味わうような味をいうのかなということでした。  (平成18年9月)

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