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なるほど法話 海 潮 音
科学 第 6 話 危うい日本人
技術立国日本が危ないと言われています。例えば、半導体を例に取ると、1988年の日本の半導体生産量は世界の生産量の半分以上を占めていましたが、10年後の1998年には三分の一以下までに減少しています。アメリカや韓国といった国々の新技術に押された結果だといわれています。
日本の技術開発はどのようになっているのでしょうか。先般、NHKテレビで「半導体産業で再逆転を目指せ」という報道番組を見ました。再逆転を目指しているのは、企業人ではなく、東北大学の大見教授という方でした。あごの張ったエネルギッシュな顔は何とも頼もしい限りでした。
大見教授は、世界で未だ成功していないレーザー光線を使っての新技術開発に挑戦され、色々な工夫をこらして、ある大手メーカーに製作を依頼されました。
メーカーでは主任研究員氏が大見教授の理論をコンピューターに打ち込み、コンピューターシュミレーションでその理論が実現可能かどうかを見たところ、コンピューターは実現不可能という答を出しました。少しやせ形の主任研究員氏いわく「企業はお金を賭けるんですから安全を確認しないと」。
それに対する大見教授の反論は「新技術を開発するという創造性は人間にだけ許されている。コンピューターは機械にすぎない。機械に従っている限り創造性はあり得ない」という喝でした。事実、肝心な点の入力忘れで、シュミレーションは訂正され、開発着手にゴーサインがでたそうです。この話に今の日本の企業体質が表れているような気がします。
また、不況で就職難の昨今ですが、今の企業は就職希望者に「どんなことがしたいですか?」とは聞かずに、即戦力を求めて「何ができますか?」と聞くそうです。これでは技術開発は望めません。
今の日本人はすべてが守りの態勢になりました。自分のことしか考えていないからです。自分の命を引き継いでくれる子供を産み育てるということまでも、まともに考えようとしなくなりました。未来の日本のために果敢に挑戦される大見教授に拍手を送りたいと思います。(平成12年4月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。