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なるほど法話 海 潮 音      


科学 第 4 話  情報とは何か    

現代社会は情報化社会だといわれます。この「情報」ということについて解剖学者の養老孟司さんが大変興味深い論説を『毎日新聞』(十一月二十一日朝刊)に掲載しておられましたので、お読みになった方もあると思いますが、ご紹介いたします。

まず養老さんは現代社会を都市化と情報化で特徴付け、それらは共に脳化でまとめられるとされます。都市とは脳がハードとして外に実現したものであり、情報とは脳と脳のあいだを飛び回る信号のようなものであると。そしてハードとしての都市はともかく、情報については、今日ごくふつうに使われることばであるのに、どういう性質でどう定義されるか、それを考える人は少ないと述べられ、ご自身の考えを次のようにのべておられます。

「情報の特質、それはとてもはっきりしている。それは情報は止まっているということである。そういうと、多くの人は怪訝に思うはずである。人という実体があり、その間を毎日変化する情報がフラフラ飛び回る。そういうイメージがあるに違いないからである。

じつはすべての情報は固定している。ビデオにとったり、テープに録音すれば、それはだれにもわかることである。いつでも同じテープが聴けるし、同じ映画が見られる。

同じ映画を5回続けて見たとする。1回ごとに感想が違う。そうに決まっているのである。ところがその間、映画はまったく同じではないか。それなら変わったのは、映画という情報ではない。あなたの脳なのである。

生き物は二度と同じ状態をとらない。それが生きているということであろう。情報は違う。いったん表現されれば、そのまま「止まってしまう」のである。」

情報とは、すなわち「ことば」のことでしょう。都市がハード(堅い)なら情報はソフト(軟らかい)なのですが、情報の本質が「ことば」であるなら、実はソフトが固定したもので、ハードが壊れる(無常な)ものなのですね。 (平成12年1月)


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