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なるほど法話 海 潮 音
科学 第10話 子供とパソコン
半世紀前、日本は戦争に負け一文無しになりました。その日本が四半世紀後には経済大国にのし上がり、世界を驚かせました。
しかしその間、日本は色んな大切なものを失ったようで、更にその後の四半世紀が経った今日、日本はあらゆる面でひずみが表面化し、歯車がかみ合わなくなっている様子が、毎日のTVや新聞の報道で実感できます。
そんな報道の一つとして、7月16日の『毎日新聞』朝刊の「脳の発達 ITが阻害」という記事を読みました。
その記事は「その男の子はパソコンの電源を入れ、パスワードを入力してゲームを始めた。」という書き出しで始まります。
その男の子というのは2歳11ヵ月だというから驚きです。恐らく親はこの子は天才だと思っているのではないかと勝手な想像をしてしまいます。
子どもの脳にゲームが与える影響を調べている森昭雄・日大教授は、ゲームのしすぎによって前頭前野(人間を人間たらしめている脳の最重要部)が機能不全になった状態を「ゲーム脳」と名付け、「テレビゲーム漬けの子どもは、考えることを放棄し、がまんできない。脳が発達する8〜10歳の時にこんな状態を放置すると、前頭前野が未熟なまま大人になる」と警告しています。
また、前頭前野の発達度を調べるための実験を30年間続けている信州大の寺沢宏次・助教授によると、前頭前野の抑制が十分に働かない状態の比率は、69年には小2が一番高かったのに、98年では小6が倍増して最多となり、前頭前野が支配する状況判断や行動抑制の未熟さが目立つと指摘しています。
戦後の日本はすべてを捨てて経済復興だけを押し進め、わずか四半世紀の間に経済大国になったわけですが、四半世紀という期間は、ちょうど世代差の期間でもあります。
親は死にものぐるいで頑張り、子どもは経済大国という満ち足りた国に生まれました。頑張ってきた親は子どもにも頑張れと励ましますが、子どもには頑張るという意味が実感できないようです。
日本の復興は優れた技術力に負うところが大きいと思うのですが、現代の若者は理系を敬遠しがちです。そのためか、公立の中学校は勿論、小学校でもパソコンを導入し、授業で子どもたちに使わせていると聞きます。
これは2歳の子どもにパソコンを与え、ゲームをさせて我が子は天才なりと思っているかも知れない親の愚行と同じではないですか。
門脇厚司・筑波大教授も「ITを使う前に、まず脳を鍛えるべき」と言っています。幼児や児童にパソコンを与えるのは問題でしょう。(平成14年8月)
音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。