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なるほど法話 海 潮 音      


科学 第 1 話  プルトニウム    

11月8日、日本の輸送船「あかつき丸」(4800トン)がフランスのシェルブ−ル港でプルトニウム1トンを積み込み日本に向けて出港しました。

日本はこのプルトニウムを原子力発電所の燃料として、即ち平和利用の目的で輸送しているのですが、プルトニウムは比較的容易に原爆の材料になるそうですから、もしこれが輸送中に核ジャックでもされたら大変です。しかもプルトニウム1トンの量は原爆100発分だそうですからただ事ではありません。

ですから、海上保安庁では「あかつき丸」護衛専用の巡視船「しきしま」(6500トン)を203億円もかけてわざわざ建造したほどです。更に「あかつき丸」は米軍によって衛星を利用しての監視も受けていますし、日本のプルトニウム輸送に反対する環境保護団体グリンピ−スは大型タグボ−ト2隻で全航路を追跡するといっています。

日本はなぜこうまでしてプルトニウムをフランスから運び込もうとしているのでしょうか。日本はこのプルトニウムを高速増殖炉に使おうとしているのです。この高速増殖炉というのは、燃焼した核燃料よりも多い核燃料が炉内で生み出される発電用原子炉で「夢の原子炉」と言われています。

資源の無い日本にとっては魅力的な原子炉ですが、開発に時間と費用がかかりすぎる上に危険度が高いために諸外国では計画中止となっています。日本は30年後の実用化をめざしているそうですが、もしこれが達成されれば、燃やした燃料以上の燃料が出てくる原子力発電所の誕生と言うことになり、そのイメ−ジが与える影響力は計り知れないものがあるように思われます。

それでなくても使い捨ての世の中です。有限であることを忘れ無限であるかのごとく錯覚している我々は、本当に無限を手にしたかの如く横暴さを増し、地球の命を更に早める方向へとつっぱしっていくでしょう。諸外国が止まり始めたのに、日本だけ勢いを増そうとしています。(平成4年12月)


音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。