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なるほど法話 海 潮 音
人生 第12話 人生いろいろ
「人生いろいろ」といえば、まず第一に思い出されるのは、1987年、49歳の島倉千代子さんが歌った「人生いろいろ」でしょう。これは次の年にかけて130万枚のヒットを記録しています。
歌詞の一節に「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ 咲き乱れるの」とありますから、人生は人によっていろいろだという意味かと思います。
これを言葉として更に有名にしたのが小泉元首相の「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」です。
こちらは、2004年6月2日の衆院決算行政監視委員会において、民主党の岡田代表(当時)によって、「1969年の衆院選で落選後、勤務実態がないにもかかわらず、幽霊社員として厚生年金に不正加入していたこと」について追及されたときの小泉元首相の答弁です。
岡田代表は「それが総理大臣の言う言葉か」と逆上して質問を止めて席に戻ったそうですが、その後、岡田代表は通産省の役人時代に父親が経営するジャスコの子会社の役員に名を連ねており、国家公務員法兼業規定に違反していたことを時効になるまで隠していた事が発覚したのだそうです。どうも小泉元首相の「社員もいろいろ」の意味はそういうことだったようです。
これらは、いずれも、人生は人によっていろいろだということを意味しているでしょう。
ところで、私が申し上げたい「人生いろいろ」は、一人の人生の中にもいろいろな事があるという意味の「人生いろいろ」です。
私が申し上げるまでもなく、島倉千代子さんは現在71歳で現役歌手を続けておられますが、それこそ波乱万丈の過去をお持ちです。
小泉元首相も岡田元代表もいろいろな過去があるわけです。過去がいろいろであれば、未来もいろいろです。私たちも明日があるか知れない状態で生きています。
「生きている」と言えば、自分の力で生きているように聞こえますが、明日が知れない身であれば、たまたま生きていると言った方が正確でしょう。生かされているといってもいいわけです。
そのような状況の中で主体的に生きようとすれば、どうすればよいか。それは、今を真剣に生きるしかないでしょう。
経典にも次のように言っています。「過ぎ去れるを追うことなかれ。いまだ来たらざるを念うことなかれ。・・・ただ今日まさに作すべきことを熱心になせ。たれか明日死のあることを知らんや。」(『一夜賢者経』増谷文雄訳)
自己の人生を切り開くには、一瞬の間も置くことなくやってくる「今」を捉えきって生きるしかないと思うのですが。 (平成二十一年八月)
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