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なるほど法話 海 潮 音      


人生 第 1 話  地獄と極楽の話    

「地獄と極楽」という話がありますが、法話によく使われますのでお聞きになった方も多いことと思います。既におききの方も少し我慢しておつきあい下さい。

まず、地獄からお話ししましょう。地獄というのは、この世で悪い行いをした人が死んだ後行く所だとされ、そこは色々な苦しみが満ちあふれていると云われています。しかし、地獄の様子を見てきたという人の話によりますと、地獄にもすばらしいご馳走のお膳が並ぶときもあるのだそうです。そして、地獄の住人がそのお膳について整然とならんでいるのですが、かわいそうなことに誰もそのご馳走を食べる事が出来ないのだそうです。実は持っている箸が1メ−トルもあり、ご馳走をつまんでも箸が長すぎて食べる事が出来ないのだそうです。

一方、極楽に行ってみると、ご馳走のお膳や1メ−トルもある箸は地獄と全く同じなのだそうですが、極楽の住人は長い箸でつまんだご馳走を自分の口に入れないで、自分の向かい側にいる人の口に入れて、お互いに食べさせあって、ニコニコ食事をしていたそうです。

この話は勿論作り話ではありましょうが、私達の日常生活を反省させる良い話だと思います。仏教では「智恵」ということを説きますが、この極楽の住人はまさにその智恵を持っていると言えるでしょう。

仏教で言う智恵とは、自分のことばかり考えずに相手の為になることをしよう。そうすれば、相手だけでなく自分にも振り返り、結局、皆が明るく楽しく生きる事が出来るようになると教えています。

そうは言っても、極楽の住人のようにはなかなかいかないわ、とお考えかも知れません。しかし、私達日本人は、宴会の席などでは自分の杯にはつがずに必ず相手の杯に酒をついで、極楽の住人と全く同じ事をしているではないですか。これをもっと日常生活にも広げていきさえすればよいのです。お互い頑張って明るい世界を開きましょう。(平成4年7月)


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