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なるほど法話 海 潮 音
文化 第21話 自作川柳
今夏は異常に暑い夏でした。また各地で集中豪雨の被害が目立ちました。日本だけでなく世界各地からの報道もありました。犠牲者のご冥福と被災者へのお見舞いを申し上げます。 この異常気象は温暖化によるものとすれば、私たち人間がもたらしたものと言えましょう。少しずれがありますが、川柳を作ってみました。 「夢叶う 積もりの文明 地球破壊」 お恥ずかしい限りです。自作の川柳に解説を試みます。いわゆる蛇足というやつです。申し訳ありません。お付き合いをお願い致します。 上記自作川柳のキーワードは「文明」です。文明の兄弟のような言葉に「文化」があります。 両者とも漢字本来の意味を持っていますから、例えば『広辞苑』でそれぞれを引きますと、「文化」=「文徳で民を教化すること」とあり、「文明」=「文教が進んで人知の明らかなこと」とあります。 しかし現在私たちが日常で使っている「文化」と「文明」は漢字本来の意味で使っているのではなく、「文化」は英語のCulture の訳語としての意味で使っていますし、「文明」は同じく英語のCivilization の訳語としての意味で使っていると言えましょう。 Culture の本来の意味は「農耕」です。農耕の仕方はそれぞれの土地によって異なります。したがって「文化」はそれぞれの土地の生活様式にかかわると考えられています。 一方、Civilization はCivil(市民の)という言葉が基になっていますからCity(都市)とかかわる言葉とされています。 都市には様々な人が集まって来ますから「文明」は誰にも通用する普遍性を持っているとされています。「文化交流」と「世界文明」という使い方で両者の違いを明らかにできましょう。 ところで、文明の普遍性について「誰にも通用する」ということが言われますが、私は更にその奥には「誰もが欲すること」があるように思います。即ち人間の誰もが持つ欲望です。 「文化」が土地、即ち自然に基づく言葉であるのに対し、「文明」は人間、更に言えば、人間の持つ欲望に基づく言葉のように思います。 人類の歴史は長い間「文化」に軸足を置いてきましたが、ここ一、二世紀の間に「文明」に軸足を移したように思われます。 「文明開化」という言葉は夢の世界の幕開けを連想させますが、その夢とは欲望が見る夢だとすれば、そろそろ夜明けが近づいていることを知るべきでありましょう。 トランプ米大統領の「パリ協定」離脱や、北朝鮮の米領グアムに向けてのミサイル発射計画など、早く夢から覚めてもらいたいものと思います。(平成二十九年九月) |
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