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なるほど法話 海 潮 音      


文化 第1話  日本文化の特質    

無事に21世紀を迎えることが出来ましたこと、先ずはお慶び申し上げます。

しかしながら、20世紀は人類にとって各方面にわたって限界を超えた世紀ではなかったかと思います。21世紀は、何とか英知を働かせて人類の存続を可能とするか、あるいは英知の発動がならず滅びてしまうか、岐路の世紀となるように思います。

そこで日本がどんな役割を果たせるか、日本文化の特質を考えてみたいと思います。

アジア史の専門家、宮崎市定氏によると、紀元前3000年頃、西アジアで青銅器の使用が始まり、隣接する地中海諸国は勿論、インド、中国へと東方にも拡大しました。

その後、紀元前800年頃、同じく西アジアで鉄器の使用が始まり、青銅器を追いかけながら東方に進み、日本には紀元前後頃、青銅器と鉄器がほぼ同時に伝わり、その結果、日本には青銅器時代が存在しなかったといわれています。

世界史的に見て青銅器時代と都市国家時代とは一致するそうですから、日本には都市国家時代がなかったことになり、氏族制度から一躍小型の古代帝国が成立したといわれています。

都市国家の特質とは何かといえば、文明であります。都市には雑多な人々が集まりますので、誰にも通用する合理的・普遍的精神が発達し文明をもたらしました。長い青銅器時代を持つギリシャにその典型を見ることが出来ます。

しかしその文明の特質について司馬遼太郎氏はアメリカ製のジーパンを例に、普遍性に加えて「イカシテイル」という性質があると指摘されています。私はこれを「誰もが欲する性質」と表現したいと思います。

すなわち文明とは、「誰にも通用する性質」と共に「誰もが欲する性質」を持つということであります。そして現代文明の特質は、前者よりも後者の「誰もが欲する性質」の肥大化ではないかと思います。これが環境破壊といった限界超過症候群の発病構造といえるでしょう。

日本は幸か不幸か、文明(人間中心型精神)をもたらす都市国家時代というフィルターを通っていないため、青銅器による食料生産革命がなされる以前の、狩猟採集時代の自然共生型精神を色濃く残しているといわれます。

それはフランス料理や中国料理に対する日本料理の自然を生かした料理に見ることができ、また庭園についても同じ事が言えましょう。

元来の日本文化は文明に犯されていない自然共生型の文化です。21世紀の人類に英知を提供しうる文化かと存じます。(平成13年1月)  


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